桃月庵白酒の「死神」後半2023/12/26 07:22

 蒲鉾の板に「医者」と書いて出した。 近所に住む占いの先生に、辰巳の方角で、一番目の医者に診せれば治ると言われたのが来た。 足元に死神がいれば、助かるんだが。 次の間に、下がっていてください。 「アジャラカモクレン、研究会、もう国立劇場ではありません」ポンポン。 死神、いなくなる。 旦那が起きて、何か食べ物を、と。 有難うございます、お薬とかは? そうね、家に取りに来てください。 大根の葉っぱを刻んで渡す。 どのように飲めば、よろしいので。 そのままでも、煎じてもいい。 十両ございます。

 その人が縁者を紹介して、また十両、手に入る。 二十両、みんな飲んじゃった。 評判になって、いろいろなのが来る。 五十両出します。 七十両出します。 セリで、百両。 飲み切れないと思ったが、みんな飲んじゃった。

 先生、一日一軒と決めている。 越後屋、大層な屋敷、時間外は割増で。 死神が枕元に座っている。 寿命が来ている、駄目だ。 三月長らえてくれれば、五百両、一息で出せる。 もっと出せる、千両。 ただ枕元なので、気の利いた力のある若い者を四人、用意してくれ。 目くばせしたら、蒲団をひっくり返すんだ。 一度きりだ、病は気からというから。 カゴメカゴメかなんかして、遊びましょう。 死神が驚いた。 看病しているのに、おかしい。 カゴメカゴメ……後ろの正面、だーーれ!

 旦那が咳をした。 起きたかったら、起きてもよろしいんでしょうか。 顔を出すたびに、五十両貰っていくことにした。

 馬鹿、馬鹿、約束をやぶりやがったな。 枕元は、駄目だ。 あれはウチの弟弟子だ、真打前に二つ降格だ。 ちょいと、つきあってもらうよ。 何だここは、暗いじゃないか。 これらの蝋燭が、人の寿命だ。 本当だ、ずいぶん勢いよく燃えているのが越後屋で、消えそうなのが、お前だ。 死ぬよ、取っ代えちゃったんだよ。 しょうがない、ご愁傷さん、もう無理だ。 死んだら、閻魔様に言うぞ。 最後だな、お前は。 何とかならないか? この蝋燭に、火を移せば、命が延びる。 点いたよ、点いたよ! 危ねえ、火傷する! アッチ、アッチッチ、アッ…。(蝋燭を持った手を横に振ってしまった。) ドタリ。

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