「失敗学」失敗は社会共通の財産 ― 2006/09/08 07:47
NHK教育『知るを楽しむ』“この人、この世界。”の8~9月は、畑村洋太郎 工学院大学教授の「だから失敗は起こる」。 これがめっぽう面白い。 最近の 事故の事例を研究し、その本当の原因をつきとめ、正して行く。 畑村さんは、 失敗に学ぶことが大事で、物事をつきつめて考え、よく調べて、きちんと知識 にするところまでやると、本当の科学的知識が出来るといい、「失敗学」を提唱 する。
最初に取り上げたのが、2004年3月26日の六本木ヒルズの回転ドア事故。 事故直後、畑村さんたちは「ドア・プロジェクト」を立ち上げ、各種のドアの 安全性の研究を始めた。 あの回転ドアは、重量が2.7トンもあった。 セン サーが作動してから、30センチも、慣性の力で進んでしまう。 ドアの衝撃力 は、子供の頭が破壊される危険があるとされるものの、8倍もあった。 ヨー ロッパで発達した回転ドアはアルミ製で、軽いから、すぐ止まるようにつくら れていた(「本質安全」)。 それが日本で改良され、見栄えからステンレス板 を張り、風に耐えるように骨組みを鉄にし、その重さを動かすために複数のモ ーターを搭載した。 万一の場合は、何種類かのセンサーを使って止めるよう に設計した(「制御安全」)。 だが想定もれということもある。 「本質安全」 を忘れて、潜在危険になっていたものを、「制御安全」で補おうとしていたのだ。
「ドア・プロジェクト」の研究によって、あそこはスライド・ドアに改修さ れた。 回転ドアについては、アルミで軽量化したり、衝撃が加わるとドアの 一部が折れ曲がる「本質安全」を考えるようになっている。 安全で、安心で、 使いやすいものにしなければならない。
畑村さんは、起きてしまった失敗は社会共通の財産だから、失敗を生かせ、 と言う。 失敗を取り入れながら、新しい創造をやっていくのが大事だ。 ま ず原因を究明して、必要なら責任を追及する。 そういう順番と価値の置き方 を変えた社会にする必要がある、と言う。
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