身近な「予測できるはずの失敗」2006/09/10 07:07

 畑村洋太郎教授の「だから失敗は起こる」、第三回は「予測できるはずの失敗」。  たばこの火の不始末による火事は年に6千件、幼い子供が電気ポットで火傷す る事故も跡を絶たない。 2005年11月ソウルの地下鉄で、ベビーカーが電車 のドアに挟まれ、母親が30mも引きずられる事故が起きた。 同様の事故は、 3年前に東京駅でも起こっていて、これは予想、予告できる失敗だった。 失 敗の主な原因に、無知、誤判断、決まりを守らない不注意がある。 「ドア・ プロジェクト」で実験したところ、ベビーカーの車輪が電車のドアに挟まれて も、その幅が狭いと、発車を止めるランプが点かないケースがあることがわか った。 ベビーカーに子供を乗せて、慌ててはいけない、電車に駆け込まない ことが大事だが、人間は誰でも間違えるということを前提に、安全なシステム をつくるべきだ。

 2006年6月7日、新潟県五泉市で学校の防火シャッターに男の子が首を挟 まれる事故が起こった。 点検中の防火シャッターが下りてきたのを、すり抜 けようとして、ランドセルが引っかかったのだった。 シャッターは下り始め ると、重くて止まらない。 子供には、下がってくるシャッターを見ると、す り抜けたくなる性質があって、同種の事故は2004年に埼玉県でもあった。 子 供たちには、やれば死ぬと伝えたかった。 さわると非常停止する新しいシャ ッターがつくられるようになり、2005年12月以降は安全装置が義務付けされ た。

 7月31日埼玉県ふじみ野市のプールで女児が死亡する吸水口の事故が発生 し、全国のプールで2,300ヶ所の不備が発見された。 プール吸水口の事故は 沢山あり、予測できた事故である。 当り前のことをやらずに毎年、プールの 吸い込まれ事故が起きている。 そういう場所で遊びたがるのは、子供の性質 である。 学校の中にある危険は、上の防火シャッター、プール吸水口のほか、 水平に動く校門、サッカーゴールなどがある。 潜在的危険は身の回りにいっ ぱいある。 一番危険なのは、溺れる事故。 乳幼児は頭が重く、戻せないの で、風呂はもちろん、洋式トイレ、バケツの水などでも、事故が起こる。