スコットランドに多かった日本人留学生 ― 2007/02/28 07:08
オリーヴ・チェックランドの『明治日本とイギリス』に、日本人留学生に関 連して、スコットランドの大学とコレッジの話がある。 すでに1860年代初 期に、長崎のグラヴァー商会のトマス・グラヴァーが、アバディーンの学校に 日本人を送り込んでいたという。 グラスゴー大学は、スコットランドの産業 基盤のめざましい発展と共にあった。 化学と潜熱に関するジョーゼフ・ブラ ックの業績、工学を刷新したジェームス・ワットがもたらした名声により、1840 年には最初の工学欽定講座が開設され、工学科の需要は増大、発展していた。 グラスゴー第二の大学、アンダーソニアン(現、ストラスクライド大学)は、 もと職工学校で、職工や専門技師のために平易で授業料の安い、昼間部と夜間 部のコースを置いていた。 1866年~68年、この夜間部に山尾庸三とヘンリ ー・ダイヤーが在籍していた。(ダイヤーが苦学の人だったことは、<小人閑居日記 2005.5.26.>「日本人の生活と品性の特性」参照)
オリーヴ・チェックランドは、グラスゴーが日本人に好まれたのは、グラス ゴー大学の存在と、アンダーソニアンの安い学費にあったのではないか、と推 定する。 とりわけ造船学の、応用科学と工学に研究上の関心をおくケルヴィ ンを含む教授陣の存在が大きく、グラスゴーに学びに来た日本人は科学者、技 術者を目指して、自然哲学(物理学)、数学、工学、化学、造船学を学んだとい う。 2月18日に書いた福沢三八が日本語で受験したことにも触れ、註釈の 形で夏目漱石が関係したことも述べている。
1880年~1914年に、グラスゴー大学には約60名の日本人留学生が登録され ている(たいてい官費留学生)。 エディンバラ大学も含めたスコットランドの 四つの古い大学に日本人留学生が存在し、当時の日本人留学生の最大部分がス コットランドに集まっていたといえるかもしれない、とオリーヴ・チェックラ ンドは書いている。
小人閑居日記 2007年2月INDEX ― 2007/02/28 10:42
3350 鼠を交番に持って行く話<小人閑居日記 2007. 2.1.>
3351 正朝の「藪入り」に喝采<小人閑居日記 2007. 2.2.>
3352 圓太郎の「代り目」<小人閑居日記 2007. 2.3.>
3353 さん喬の「ちきり伊勢屋」(下)の(上)<小人閑居日記 2007. 2.4.>
3354 さん喬の「ちきり伊勢屋」(下)の(中)<小人閑居日記 2007. 2.5.>
3355 さん喬の「ちきり伊勢屋」(下)の(下)<小人閑居日記 2007. 2.6.>
3356 「福澤諭吉の手紙 朗読会」<小人閑居日記 2007. 2.7.>
3357 兵禍と文事、軍事費と教育費など<小人閑居日記 2007. 2.8.>
3358 「牛乳瓶事件」と神津バター<小人閑居日記 2007. 2.9.>
3359 「我ネーションのデスチニー」<小人閑居日記 2007. 2.10.>
3360 一身独立して一家独立、一国独立、天下独立<小人閑居日記 2007. 2.11.>
3361 手紙から知る福沢の日常生活<小人閑居日記 2007. 2.12.>
3362 「雛菊」と「薄氷(うすらひ)」の句会<小人閑居日記 2007. 2.13.>
3363 「雛菊」と「マーガレット」の相違<小人閑居日記 2007. 2.14.>
3364 「薄氷(うすらひ)」レポート<小人閑居日記 2007. 2.15.>
3366 漱石と福沢、そのマクラ<小人閑居日記 2007. 2.16.>
3369 漱石と福沢、司馬遼太郎さんの推測<小人閑居日記 2007. 2.17.>
3371 漱石と福沢、ある関係<小人閑居日記 2007. 2.18.>
3372 春浅い芭蕉ゆかりの深川を吟行<小人閑居日記 2007. 2.19.>
3373 思いのほかの好成績(条件付)<小人閑居日記 2007. 2.20.>
3374 水鳥群れ清澄の池温む<小人閑居日記 2007. 2.21.>
3375 落語と俳句に通じるもの<小人閑居日記 2007. 2.22.>
3376 洋式の建物に日本風の屋根「帝冠様式」<小人閑居日記 2007. 2.23.>
3377 建築家の転向と抵抗、丹下健三と前川國男<小人閑居日記 2007. 2.24.>
3378 満鉄「鉄道付属地」の都市建設<小人閑居日記 2007. 2.25.>
短信 3379 「共用品」って、何<等々力短信 第972号 2007.2.25.>
3380 エディンバラの街歩き<小人閑居日記 2007. 2.26.>
3381 スコットランドの岩倉使節団<小人閑居日記 2007. 2.27.>
3382 スコットランドに多かった日本人留学生<小人閑居日記 2007. 2.28.>
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