三社祭を基本としたコミュニティ2012/06/12 02:49

 浅草の商人というのは、みんな職住接近で、店の上に住んでいたりするから、 店を開ける前の朝とか、仕事の合間の昼とか、小腹を満たしたいので、軽食喫 茶が多いという(和装履物「辻屋本店」辻啓之さん推薦の〔銀座ブラジル〕)。  浅草に生れ育った旦那がたは、浅草寺幼稚園、浅草小学校に通い、親もそのOB やOGが多い。 毎年、夏になると仲見世商店会で千葉の保田に家を一軒借り、 子供たちみんなで一か月くらい行っていた。 親のいた記憶はなく、青年部の お兄さんたちが、一週間ぐらい仕事を休んで、代り番こに来て、面倒をみてく れた。

 その青年部、三社祭でもお神輿の渡御でも、中心的役割を果たす。 浅草の イベントは、『浅草 老舗旦那のランチ』巻末の「浅草四季暦」に一覧表がある が、その一番の基本は三社祭だ。 三社祭では、親が若い連中に指示すると、 青年部が実際に動いて、祭りを仕切ったり、子供たちの面倒をみるというシス テムが、脈々と受け継がれている。 三社まであと一週間となると、それぞれ やることがわかっているから、だーっと準備が整う。 浅草には、三社祭を基 本としたコミュニティがきちんと出来上がっているので、それを応用すれば、 毎月のイベントはもちろん、どんな催事でも出来てしまう。 祖父から父、父 から子、子から孫と、役割分担が継承されていて、完璧に配役が決まっている。  それはやはり、近隣に住んでいる者同士ってことだろう。 三社祭が終わると、 翌日から、もう来年の袢纏の話をするというように…。

 雑誌『サライ』7月号の特集が「『日本祭り』大全」で、茂木栄國學院大學教 授が、祭りと社会の誕生は合わせ鏡だとして、こう言っていた。 「なぜなら、 社会とは神祭りのために人々が集まり、意見を交換する状態を指した語。社会 の社とは神を祀る場所のこと、会とは多くの人が集まって相談するというのが、 もともとの意味ですから」