「世代交代」と、晩年の「お手本」2017/03/21 06:35

 19日日曜の朝日新聞朝刊読書欄から、さらに二つ。  一つの見出しは、「小説で問う「世代交代」の意味」。 沢木耕太郎著『春に 散る』上・下(朝日新聞出版)の、武田徹さん(評論家・ジャーナリスト)の 書評(藤原新也著『大鮃(おひょう)』(三五館)と合わせて)。 「元ボクサー 四人の物語」「渡米していた一人の帰国から仲間が再び集まり、共同生活を始め る。」 「両作は共にフィクションとして書かれた。沢木は過去に何度もボクシ ングを執筆対象としており、『一瞬の夏』というノンフィクションの傑作があ る。」 「著者たちは共に1940年代生まれ。日本のノンフィクションを牽引し てきた創造力に翳りは感じないが、世間一般的には世代交代が意識される年齢 に達している。そうした状況の中で今回のテーマが選ばれたのだとしたら、特 定の誰かの物語となるノンフィクションよりも、生命と思いを受け継いでゆく 普遍的な世代交代の物語にふさわしいフィクションの形式が積極的に選ばれた のかもしれない。」

もう一つは「売れてる本」で、見出しは「晩年の「お手本」を求めて」。 斎 藤茂太著『老いへの「ケジメ」』(新講社ワイド新書)を、佐々木俊尚さん(ジ ャーナリスト)が取り上げていた。 高齢者に向けて、老後の生き方を指南す る本が目立つようになった、その一冊。 「先手を打って心身をともに整理し ていくことが必要だと著者は説く。」 「こうした本が多く読まれるようになっ たのは、」「近代の終焉と高齢化社会の訪れというダブルパンチで、高齢者の古 い体験は以前ほど敬われなくなり、高齢者の数も激増した。「老後」は幸せな晩 年ではなく、不安で不透明な未来へとイメージを変えつつある。そういう状況 では、どのように人は老いて成熟すれば良いのかが明確ではなくなってしまう。 「老後」の良きロールモデルが喪われたのだ。だから高齢者は、手本を求めて 生き方指南本に手を伸ばす。」

 「本書の身辺整理の哲学はこの分野で人気の「そうじ」ものやミニマリスト 本に通じるものがある。老いも若きも、自己啓発の時代なのだ。」と、佐々木俊 尚さんは言う。