パルスオキシメーターの未返却30万個2023/08/18 07:02

 日本人は、いろいろな行列に行儀よく並ぶ。 災害に遭ったような時にも、水や食料、支援物資などの配布に、パニックにならない品性を持っている国民だと、思っていた。

 ところが、である。 7月30日の、朝日新聞の報道を読んで、びっくりした。 新型コロナの自宅療養者向けに都道府県が無料で貸し出したパルスオキシメーター(血中酸素測定機器)が、療養後に、全国で少なくとも約30万個も返却されていないことが分かった、というのである。 試算では計約15億円になり、貸し出しは市などでも実施しているので、実際の未返却数はさらに多そうだという。

 貸し出し事業には2020年4月に始めた国の新型コロナ感染症緊急包括支援交付金が充てられた。 購入や配送、回収を都道府県が担い、今年5月に原則終了した。 朝日新聞の質問に45都道府県から回答があり、確保した計約176万5300個のうち計約30万個、約17%が未返却だった。 最多が東京都の約7万個、埼玉県の約5万5千個、神奈川県の約4万個と続く。 割合では、沖縄県が約44%、佐賀県約40%、山口県約38%など7県が30%超。

 貸し出し時の流れは、例えば東京都では、感染者の氏名や住所、電話番号などが都側に登録されると、食料とともに、都がパルスオキシメーターを送る。 その際、「療養期間1週間後に返却を」と呼びかける手紙と返信用の封筒も同封した。 沖縄県は、貸し出し機器に「貸与品」というシールを貼り、配送時に同封したしおりには「紛失・故障と認められる際は購入費用を弁償していただく場合がある」とも書いていた。

 大半の自治体が電話やショートメッセージで未返却者に督促していた。 返ってくる未返却の理由は、「なくした」「捨てた」などが多いという。 ネットでの転売例もあるらしい。

 多くの自治体が、すでに積極的な督促をやめている。 国の交付金を充てていた貸し出し事業が、5月の「5類移行」に伴って終了してしまったからだ。 今は、「お金のかからない」ホームページで返却の呼びかけをしているという。

 日本人の品性は、変わってしまったのか。 若い人だからかと考えがちだが、新型コロナの感染者、どちらかと言えば、高齢者の方が多かったのではないか。