『小谷直道 遺稿・追想集』2007/05/06 07:05

 昨年の4月22日に亡くなった友人の『小谷直道 遺稿・追想集』が刊行され た。 この種の本として不思議だったのは、最後の略歴のところに亡くなった 日にちも、原因も書かれていないことと、ご家族による思い出の文章のないこ とだった。

 小谷直道君は、ずっと読売新聞の記者で、亡くなった時はよみうりランドの社長 だったから、追想の書き手には困らない。 読売新聞グループ本社会長・主筆 の渡邉恒雄さんをトリ(ここでこの言葉が適当かどうかわからないが、小谷君 は高校生の頃から寄席好きだった)に、東京本社社長で慶大新聞時代の先輩で もあると聞いた滝鼻卓雄さん始め、たくさんの読売マンが追想を書いている。

 それを読むと、死の事情が少しわかってくる。 一年半前からガンだった。  宣告を受けたあと、病気を一切口外してはならないと家族に厳命した。 「株 式を上場している会社の社長として責任がある」からで、奥さんには「俺も毅 然としているから、お前も毅然と振舞え」と言ったという。 読売新聞東京本 社特別編集委員の橋本五郎さんの「生粋のコラムニスト」という文章がさすが なのだが、娘さんから受け取った手紙に「父は本望だったのでしょう。命と仕 事との選択を迫られた時、父は仕事を取る人間だったと思います」と、あった そうだ。 夫人に対する最後の言葉は、「急に病院に行くので、今日の会合は欠 席させてもらう、あさって(月曜)の役員会の進行は会長にお願いして」とい う会社への業務連絡だったという。