中国の圧倒的な存在感2014/05/19 06:32

 15日は福澤先生ウェーランド経済書講述記念日の講演会だった。 駒形哲也 経済学部教授の「中国経済を考える―“社会主義市場経済”は続くのか」。 三 田演説館の福沢先生肖像画の横のフランシス・ウェーランド先生の額、今年は 吊り方が悪く、深くお辞儀している。 駒形教授、早慶戦がウィークデーにず れこんだ際、二時限目から休講する慣例に、初めは上野彰義隊の戦争でも講義 を止めなかった福沢先生の故事を持ち出して授業をしていたが、最近は軟化し ているそうだ。

講演は、つぎの構成だった。 はじめに―「群盲象を評す」?/1. 中国経済 のプレゼンス/2. なぜ持続的に高度成長?/3. 中国で開発独裁は溶解しな い?/4. “社会主義市場経済”は続くのか

 角度を変えると異なる中国が見える。 南から見ると「外資」、浙江省あたり 中央部だと「地場民営企業」、東北部だと「国有企業」が見えてくる。 政治や 歴史に「領空侵犯」を許してもらって、全体像の解明を試みると、結論は民間 企業の大衆資本主義を包摂した国家資本主義、といえようか。

 1. 中国経済のプレゼンス。 改革開放により、特に1992年から、「社会主 義市場経済」の成果で、2000年イタリア、2004年フランス、2005年イギリス、 2006年ドイツ、2010年日本をつぎつぎに抜き、名目GDP世界第2位となっ た。(人口1人当りは80位) それは輸出と投資に依存している。 

輸出。 世界貿易では中国のプレゼンスが高まって、依存度は貿易総額で 50%近く、輸出総額で20%を占め、それぞれ1位になっている。 ただ2007 年を境に、内需が大きくなり、貿易依存度は低下している。 外貨準備高3兆 8千億ドルに達し、米国債購入でアメリカを支え、国富ファンドなど金融面で もプレゼンスを示している。 工業製品では200品目以上で世界一(『人民日 報』)、圧倒的なシェアを持つ「世界の工場」になっている。 主な世界一は、 パソコン、自転車、デジタルカメラ、録画再生機、化学繊維、オートバイ、携 帯電話、銑鉄、セメント、粗鋼、スズ、カラーテレビ、鉛、窒素肥料、亜鉛、 アルミニウム、りん酸肥料、カーオーディオ、硫酸、工作機械、ポリ塩化ビニ ル、ポリスチレン、ビール、自動車、合成ゴム、銅。

投資。 中国経済は外資によって支えられた。 固定資産投資に対する外資 直接投資の比率は、漸増して1994年に17%に達し、以降徐々に下がった。 そ れは国内で政府・民間の投資が多くなったため。

共産党一党独裁+漸進主義+公有制(国営企業)優先(多種所有制共存)市 場経済→開発独裁(社会主義市場経済の古い言い方)、国家資本主義の一バージ ョンか。 現在、成長の鈍化、転換点(安い農民労働力投入の限界)、社会不安、 「中所得国の罠(余剰労働力の解消、後発の優位性の低下)」「体制移行の罠(政 府の役割転換の遅れ、国有企業改革の遅れ)」二つの罠共通で(所得格差の拡大、 環境問題の深刻化、官僚の腐敗)→成長方式転換の必要、金融リスク。(「二つ の罠」は、関忠雄『中国経済二つの罠』日本経済新聞社2013年による)

漸進主義の限界か? 共産党統治独裁下の資本主義の問題か?

 駒形哲也教授の結論は、体制枠内でやらなければならないこと、やるべきことが ある、ということ。(つづく)