「国家資本主義」は崩壊しないか2014/05/22 06:34

 3. 中国で開発独裁は溶解しない?

 (1)「開発独裁」論から「国家資本主義」の議論へ。

 ブレマー『自由主義の終焉 国家資本主義とどう闘うか』、ハルパー『北京コ ンセンサス―中国流が世界を動かす?』、アセモグル・ロビンソン『国家はなぜ 衰退するのか 権力・繁栄・貧困の起源』、加藤弘之・渡邉真理子・大橋英夫編 『21世紀の中国 経済篇 国家資本主義の光と影』などによる議論。

 「社会主義」を掲げるが、もはやイデオロギーではない。 「官僚が巧みに 運営する資本主義であり」「政府が主に政治上の利益を追求するために市場を主 導する仕組み」「不公平と戦うためではなく、政治的な影響力と政府の収益を最 大化するところにその原点があり…」(ブレマー)→経済効率、公平な配分を追 求する手段ではない。 戦略的長期的政策判断。 中国も「国家資本主義」で あるとの議論。

 開発独裁の溶解、民主化はあるのか? 韓国、台湾の経験。 経済発展と民 主化はパラレルな関係にあるのか(リプセット仮説…所得向上→経済的利害の 多様化→意識の多元化→豊かになった層が多元化された意識の実現に行動→統 治システムの変容)。 日欧米には、経済発展への支援、市場経済への取り込み が政治民主化につながるとの考えがあった。 ところが、北京オリンピック、 リーマンショック・国際金融危機の「乗り切り」(4兆元)→「北京コンセンサ ス」(発展を続ける中国の権威主義的市場経済主義のモデルを表わす言葉)、中 国モデル→独立した恒久モデルではないか、という考え方もある。 対外イン パクト…「走出去」(=積極的な海外進出の戦略。資源確保、中国型多国籍企業)、 国富ファンド、米国債保有、危険国への経済協力→むしろ国際経済が国家資本 主義に揺さぶられることになっている。

 (2)政治経済体制の変革はあるのか?  豊かにした実績、右肩上がりの経済。 共産党の政策の恩恵を受けて形成さ れた中間層→意識は現状維持的、中国人としての自尊心満たされる、民間企業 家層の成功は国家・政治権力に依存。(改革の内的な力は働きにくい) 政治・ 経済・社会を覆う共産党組織、制度・法規の未整備を時に補完。 所得・社会 的格差の拡大は臨界点に達しているか? しかし社会的混乱に対する忌避感も ありそう。(軍閥支配、文革の両個司令部の経験) ソ連・東欧の「硬着陸」経 験(ソ連は国有企業改革でも教訓)。 民衆の不満の多くは地方政府に対するも の、少数民族問題は支配民族・圧倒的大多数の漢族全体にとって脅威。  「軟着陸」の基盤が整うまでは、体制枠内でやらなければならないこと、や るべきことをやっていくのが、得策ではないか。(つづく)