福田康夫さん、「コロナ対応、行政の混乱なぜ?」2021/09/20 07:07

 29日選出の自民党総裁選挙の運動が真っ盛りだ。 8月28日から9月3日まで書いたNHK BS1スペシャル「独占告白 渡辺恒雄~戦後政治はこうして作られた 平成編~」のインタビューで、元首相福田康夫さんが印象に残った。 風采も立派だし、穏やかで、紳士的、語りの対象にしている人物についても、敬意と配慮が感じられた。

 その福田康夫さんが、8月28日の朝日新聞夕刊の「いま聞く」で、インタビューに答えている。 紹介に「1936年7月、東京都生まれ。早大卒業後、石油会社勤務を経て76年、父・福田赳夫元首相の秘書に。90年の衆院選(旧群馬3区)に53歳で初当選し、7期務めた。2000~04年の森喜朗、小泉純一郎両内閣で官房長官、07~08年に首相。公文書保存の重要性を唱え、11年施行の公文書管理法の成立に尽力した。」とある。

 コロナ対応、行政の混乱なぜか? 「コロナを『国家の危機管理』ととらえた有事の体制になっていない。首相官邸と官僚機構との連携プレーが十分に機能していない。」 「ワクチン接種は厚生労働省、総務省、経済産業省、防衛省・自衛隊と複数にまたがる。官房長官から(法案や人事などの閣議案件を事前に調整する)事務次官会議で『調整してくれ』と指示すれば、各省の事務次官が必死になって調整するはずなのに。」 政府の新型コロナ対応では、司令塔がだれなのかわかりにくい。 危機管理全般を担う加藤官房長官とは別に、コロナ対策は西村経済再生相と田村厚労相が、ワクチンの調整は河野行革相が、それぞれ務め、船頭多くして船山に登る―そんな状況に見える。 「司令塔はシンプルであるほうが迅速にことが運ぶ。危機管理は、各官庁が瞬時に動けるように指揮命令系統と責任の所在を明確にすることが要諦だ。」「現場の総司令官は事務次官だ。その司令官が安心して一生懸命に動くという気持ちを失ってしまったのではないか。」

 2014年に安倍政権下発足した内閣人事局は、600人を超える各府省幹部の人事を一元管理するとともに、省益より国益を重視する職員を登用することが目的だった。 だが、運用の過程で官邸による官僚人事への介入を決定的に強めた結果、霞が関に「忖度(そんたく)」の風潮が広まったと指摘される。

 (2017年の共同通信社のインタビューで)「各省庁の中堅以上の幹部はみな、官邸(の顔色)を見て仕事をしている。恥ずかしく、国家の破滅に近づいている」「官邸の言うことを聞こうと、忖度以上のことをしようとして、すり寄る人もいる。能力のない人が偉くなっており、むちゃくちゃだ」と指摘していた。

 「各省の事務次官が組織を円満かつ迅速に動かすにはこの体制でいくのが一番いいと判断して、人事案を持ってくる。」「事務次官の権威を保つのに重要なのは人事権です。その人事権をごぼう抜きするような内閣人事局の運用であってはならない。」