「青簾」と「椎の花」の句会2023/06/16 06:58

 8日は『夏潮』「渋谷句会」だった。 本井英主宰は、手術後のご療養中で、まだ後選もない。 各自が特選句を選び、その理由を話した。 兼題は「青簾(あおすだれ)」と「椎の花」、私はつぎの七句を出した。

沖の島見へる高さに簾巻き
西向きの安アパートや青簾
温泉の桶音響き伊予簾
折柄の風に靡きて青簾
椎の花三島由紀夫に凝りし頃
赤門を潜れば花椎匂ひをり
名札にはスダジイとあり花匂ふ

 私が選句したのは、つぎの七句、最初の句を特選とした。

古簾ここが「卯波」在りし路地     なな
青簾京の町屋の軒古りて       孝治
坪庭の風やんはりと青簾        美保
金沢の研師の軒の青簾         正紀
青簾に人の気配や宵の口       真智子
降りさうな空むくむくと椎の花      なな
見おろせばカリフラワーのやう椎の花 金太郎

 <古簾ここが「卯波」在りし路地>を特選とした理由について、こんな話をした。 酒を飲めないので、行ったことはないけれど、銀座の「卯波」は行ってみたい店だった。 だいたいあの辺だろうということも知っていた。 小泉信三さんや水上滝太郎の阿部章蔵さん、池田弥三郎さんなど、大先輩たちが、「はちまき岡田」などとともに、通った店として…。 この句には、俳人の鈴木真砂女の小料理屋だという、俳句の背景も感じさせる深みがある。 真砂女は、千葉の鴨川の老舗旅館を飛び出して、「卯波」をやっていた。

 私の結果。 <沖の島見へる高さに簾巻き>を美保さん、さえさん、孝子さん、真智子さん、孝治さんが、<西向きの安アパートや青簾>を照男さんが、<椎の花三島由紀夫に凝りし頃>を和子さんが、<赤門を潜れば花椎匂ひをり>を正紀さんが、それぞれ採ってくれた。 互選合計8票と、最近稀な成績だった。