ユーロヴェロEV7、1150キロ自転車旅2023/09/03 06:52

 植物学者の牧野富太郎を、槙野万太郎として描いている朝ドラ『らんまん』を7時30分から先行のBSプレミアムで見ている。 去年、朝井まかてさんの長編小説『ボタニカ』(祥伝社)を読んで、この日記の2月4日~17日までいろいろと書いていたので、それと比較しながら、ドラマは槙野万太郎をどう美しく脚色するのかと、ちょいと斜めから見ている。

 この時間の朝ドラの後は普段、火野正平が自転車で日本全国を走る「こころ旅」を見ているのだが、秋の旅が始まる前、15分単位のいろいろなシリーズ番組をやっている。 先日までは、「自転車でなければできない旅がある」というキャッチフレーズで、ヨーロッパでサイクリングロードが整備されている、ユーロヴェロ90000キロの内、EV7、1150キロ、イタリアのフィレンツェから、オーストリアを経て、チェコのプラハまで、ドイツ在住のアキラという若いユーチューバーが14日間で走る自転車旅を、20回でやっていた。

 1150キロを14日間というと、一日平均82キロ強、なにしろアルプスを越えていくのだから、登り坂も多い。 一部は自転車も積める車両のある電車旅もあった。 「人生下り坂、最高」の火野正平「こころ旅」だったら、ブーブー言うどころか、便乗する軽トラを探し、タクシーに頼るところだろう。 2022年夏の旅、アキラ青年、若いといっても、プラハが近づいたところで、体調を崩し一日休養、スタッフの電動自転車と交換してもらっていた。

 ユーロヴェロ7、何といっても、景色が素晴しい。 アルプスの山々を背景に、牧場のむこうの丘の上には教会の塔があり、いろいろの色の洒落た建物が並んでいる。 家々には、薪が積んである。 川や湖に沿って、キャンプ場のような所もある。 標識などはそれほどないようで、スマホのGPSのコース地図を頼りに進む。 舗装されていない道もあり、細い草の生えた道に入って進むと、一軒の民家に突き当たる行き止まりだったりする。 コースの整備は、地元の自治体に任せられているらしく、倒木がそのままになっていて、自転車を担いで乗り越えたところもあった。

 友人の加藤隆康さんが今年の正月に、『日本画で描く 中世の町並み』というコンパクトだが、とても美しい私家本の画文集を送ってくれた。 加藤さんは現役を退職後、俳誌『夏潮』表紙の画家、清水操画伯のNHK文化センターの教室「小品からはじめる日本画入門」に入り、以来、日本画で主にヨーロッパの中世の町並みを描いている。 ユーロヴェロEV7の自転車旅では、その画文集に収録されていた《ザルツブルクの眺望》《モーツァルト生誕の家》《ゲテライド通り》も、出て来たのであった。 番組は景色を見せながら走るだけで、その場所の解説はほとんどない。 加藤さんの本によると、ゲテライド通りはザルツブルク旧市街のメインストリートで東西320メートル、ザルツブルクが司教区になった700年ごろから整備され、中世の趣を残す世界遺産の小さな街路で、手の込んだ美しい鉄細工の装飾看板が各店ごとに表に吊り下げられている。 この通りにあるモーツァルトが1756年に生まれ、7歳まで過ごしたイエローに塗られた家は博物館として開放されているが、イエローはハプスブルク家が好んだ色で、横に吊り下げられた幟の赤白赤の「ウィーン国旗」との相性がいい、とある。