スーラータンメンと豆腐屋のラッパ2023/09/20 07:05

 ネタバレご容赦。 これから『こんにちは、母さん』を、ご覧になる方は、読まないで下さい。 神崎昭夫人事部長は、役員会の決定に反して、学生時代の親友で同期入社の木部を懲戒解雇とせず、子会社に異動させる決定をする。 そのため、自分は会社を辞めることになる。 昭夫の家に来た木部は、二人でスーラータンメンを啜りながら、洟か涙かを垂らし、自分のだからいいと言う。 柚子胡椒はないか、スーラータンメンに柚子胡椒を入れると美味くなる、と聞くが、昭夫は鮸膠(にべ)もなく、ないよ、と言う。 昭夫には、二つ借りが出来た。 昭夫にラブレターを代筆してもらった相手と結婚したのだが、実は昭夫は彼女が好きだったのだ。

 昭夫は、向島の生れ育った家へ行くようになって、お節介が過ぎるほど温かい下町の住民や、これまでと違う母と出会って、次第に見失っていたことに気付かされてきたのであった。

 福江は萩生牧師に、ピアノのコンサートに誘われて、着物姿を決めてショパンのノクターンを聴く初デート。 隅田川のほとりのレストランで食事をし、行き交う新型の水上バスを見て、乗ったことがないと言うと、乗ることになる。 福江は浮き浮きと天にも昇るような気分になった。 だが、家まで送ってくれた牧師は、実は故郷の北海道の教会に異動することになった、と話す。 福江が本心を告白しようとすると、茶を淹れようと沸かしていた薬缶が「ピィーーッ」と沸騰音を立てる。 では、と帰ってしまう牧師を追って、戸を開けたところに豆腐屋のラッパが聞こえ、さらに追いかけようとする前を、その豆腐屋が通りすぎて行った。

 夕方昭夫が戻ると、福江は電気もつけずに、薄暗い中で、一升瓶から酒を飲んで、くだを巻いていた。

 先日92歳になったという山田洋次監督は、私のほぼ十歳上だが、今月は寺島しのぶが出演する歌舞伎座「錦秋十月大歌舞伎」の『文七元結物語』で作・演出もやって、ご活躍中である。 『こんにちは、母さん』では吉永小百合に、「よっこいしょ」と立ち上がらせ、「壜の蓋も開けられなくなった、ラベルの小さな字も読めない。死ぬのはあまり心配ではないけれど、体が動かなくなって、自分で何もできなくなるのが心配だ」というようなことを言わせていた。

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