桂吉坊の「深山隠れ」上 ― 2024/02/02 07:08
桂吉坊、黒紋付に袴、上方の膝隠しを置き、珍しいネタというリクエストで、珍品を探訪して、「深山(みやま)隠れ」。 なかなかやる人がいないのは、面白くないからといわれるが、吉朝はやったが、米朝はやらなかった。 ちなみに、米朝は、やった人は出世できない言い伝えがあると、言っていた。 噺家が出て来る。 えらい目に遭う。 噺家になって25年、落語研究会のトリを「深山隠れ」で取る、これがピークではないか、とビクビクしている。
話芸、噺、さかのぼると昔話になる。 昔話、お子さんは、飽きないで、一日何度でも聞きたがる。 一つだけ、途中で終わらせても納得するのがある。 登場人物が死ぬと、許してくれる。 お前、それかい、落ちは? と、追いかけられないように、したい。
泥田圃固丸(どろたんぼかたまる)という噺家が、巡業、旅興行に出た。 行った先で、新たな人が加わったりして、評判がいいと、口コミで広まり、客のノリもいい。 しかし、何かの拍子に、気に入られないと、尻すぼみになり、それが旅先で重なると、終いに解散して、帰らなければならなくなる。 「ご難」という。 固丸先生も、天草で解散となり、ぶらぶら旅をして、帰ることになった。 ところが、道に迷って、奥地に入り込んだ。 水の流れを見つけて、助かったと、下流へ向かう。 開けた所に、家が一、二軒あった。 その一軒で、お婆さんが糸車を回している。 旅の者ですが、道に迷って、何日もご飯を食べていない。 何もないがと食べさせると、ぐーーっと寝てしまった。
明くる日、お爺さんに命の恩人だ、大阪から来た芸人だと話すと、去年役者が来て、踊りを踊ってみせてくれた、何をやる? 噺家。 カモシカ? 話をする。 誰と? 一人で。 おかしいのかい。 落とし噺。 いとしこいし。 面白い話をして、皆様に笑ってもらう。 うちの村の人に聞かせてもらおう。 例えば、どんな話だ? 「鳩が何か落として行った。 フーン。」 これで終わり。 「煙草盆をひっくり返した。 灰、拭きましょう。」 村の若いのには、聞かせないほうがいいだろう。 何日か、ぐうたら過ごして、やがて村の用事を手伝ったりするようになった。 うちの娘をもらってくれないかといわれ、お花ちゃんをもらう。
田舎の生活はヒマ、月に一ぺん町へ買い出しに行く。 4、5人で一座をつくって、必要な物を買いに行く。 行こう、行こう!(鳴り物が入る) 行け、行け! 山が一つある、噺家山御霊ヶ嶽。 五日もあれば帰って来るのに、七日、十日経っても、帰って来ない。 二十日経っても、帰って来ない。
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