脱「西欧中心主義」に道筋2009/11/29 07:53

 クロード・レビストロースの訃報や評伝、追悼文をいくつか読む。 20世紀 を代表する思想家で「構造主義の父」とされるフランスの文化人類学者。 1908 年、ベルギーのユダヤ系仏人家庭に生れた。 パリ大学で哲学、法学を学んだ 後、35~37年サンパウロ大学に赴任、ブラジル先住民を調査した。 未開社会 の構造を説き起こした『悲しき熱帯』(1955年)は大きな反響を呼び、「20世 紀を代表する書物」といわれる。 未開社会の婚姻形態の比較などをもとに、 人類の社会、文化には共通する不変の基本構造があるとする「構造主義」の考 え方は、学界に大きな衝撃を与えた。 近代思想の西欧中心主義と鋭く対立し、 人間の主体性や理性を重視したサルトルの実存主義を批判した。 親日家で、 たびたび来日した。

 「先住民の社会構造を明らかにすることで、現代文明が進んでいる方向に警 鐘を鳴らし続けた。」「文明を突き抜け、自然の中の人類という枠組みで思想を 展開してきた。」(青木保・大阪大名誉教授(文化人類学))

 「人類学は、西欧諸国が植民地を経営する必要から生まれた学問だった。し かし彼は、現地の人々がどんなに素朴に見えたとしても、人間として西欧世界 に匹敵する価値や意味を生きているのだ、という事実を学問的に証明すること に一生をささげた。」「こうして人類学は西欧中心主義を脱却し、人類の普遍の 文化を分析する学問に生まれ変わった。」(橋爪大三郎・東京工大教授(社会学))