“中津へ”(6)萩の夏みかんと福沢のマルマレット2009/11/18 07:12

萩市中央公園の夏みかん

萩城の城下町周辺を自由散策。 武家屋敷に夏みかんが生っている。 夏み かんは萩の名物・特産品で、維新後、生活に困った武士の庭に植えさせたもの が発端だそうだ。 三本植えると子弟の教育費になるということで…。 それ で山口県の県花は夏みかん、県道や国道の県管轄部分のガードレールは、白で なく、オレンジ色に近い黄色で塗られている。

昼食後の服部さんの話にも出てきたが、福沢は夏みかんでマーマレードを作 っていた。 明治26(1893)年7月2日付、長州阿武郡萩下五間町五十三番 屋敷、適塾の同窓生で医師・松岡勇記宛書簡。 松岡の送った夏みかんの礼を 述べ、マーマレードの作り方を教えている。 「夏みかん到来、子供打揃ひ喜 び候て毎日\/いたゞき居候。又かの皮は裡面の綿のやうなる処を去り、表面 の方を細に刻み、能くうでこぼして大抵苦味を除き、一夜ひやして、更に砂糖 を入れて能く\/煮詰めし後ち、所謂マルマレットと為り、之をバンなどに付 けて用ひ、誠に結構なり。マルマレットとはジャムの一種、西洋にてはヲレン ジの皮にて製するものにして、舶来屋にて買へば〔此処に直径一寸七分高さ二 寸五分ぐらゐの円筒缶の略図が描いてある…『全集』の注〕此位の鑵にて二十 五銭位の小売なり。馬鹿に高きものに御座候。其価は兎も角も、試に御製し被 成度、宅にては昨日作りて甚だ評判宜し。但し砂糖は思切て沢山に用、凡そ皮 のうでたるものと当〔等〕分位に致し、或は水飴を少し混ずるも可なり。随分 面白き調理に御座候。/右御礼まで申上度匆々如斯御座候。敬具。」

福沢の中津から始まり、福沢とは無関係かと思われた萩で終ったこの旅に、 福沢のマルマレットという素敵な落ちがついた。