福沢索引2006年3月のブログ・松沢弘陽さんの「福沢諭吉とmid-Victorian Radicalism」[昔、書いた福沢229]2020/02/29 07:08

乾長江遺墨展<小人閑居日記 2006.3.29.>
 3月25日、交詢社で福澤諭吉協会の総会と土曜セミナーの前に、鳥羽の門野
幾之進記念館の前庭にあった、門野幾之進・重九郎(ちょうくろう)兄弟の顕
彰碑を揮毫した乾長江さんの遺墨展を見た。

ショーロジ・カラウスヘーの建言書<小人閑居日記 2006.3.30.>
 松沢弘陽さんの講演「福沢諭吉とmid-Victorian Radicalism -『福翁自伝』
を手がかりに」。 『福翁自伝』の「欧洲の政風人情」に、遣欧使節で滞在中の
ロンドンで、ある英国人が議院に建言した草稿を日本使節に送ってきた話が出
てくる。 その建言書は、英国公使オールコックが新開国の日本で、あたかも
武力をもって征服した国民に対するような乱暴無状の振る舞いをしていると、
いろいろ証拠をあげて糾弾するものだった。 福沢は、本国には日本にいる英
国人と違い、公明正大な人がいるものだと、溜飲を下げる。 松沢弘陽さんは
ロンドンで調査し、その人物にたどり着く。 

George Crawshay-その生涯と活動<小人閑居日記 2006.3.31.>
 George Crawshay(1821-96)は、鉄鋼業を経営して成功、労働者にもよくした。 
1840年代、政治や社会に積極的に発言し、Radicalismの主要な運動に参加し
た。 1853年、Foreign Affairs Committeeを創設し、外交政策の実証的分析
と批判の国内改革、さらに被抑圧諸国民の支援へと活動の場を広げた。

建言書が福沢に与えた衝撃<小人閑居日記 2006.4.1.>
 福沢は、開国一偏の説を堅固にし、国際関係理解を深めた。 主権国家間の
権力政治と万国公法の存在に注目し、万国公法がヨーロッパの内でも外でも実
効性を持つと判断した。 万国公法の裏付けとしての(1)世論(自発的結社が力
を持つ)、(2)福沢のいう「権力の平均」(ヨーロッパでのバランス・オブ・パワ
ー)を知った。 しかし、その衝撃はそれほど長続きせず、後年、懐疑的な議
論も出る。 私が松沢さんの講演を聴きながら、しきりに思ったのは、その後
のイギリスの例のバルフォア宣言(1917)に端を発する中東問題、そして現在
のアメリカの外交政策と戦争のことだった。 Foreign Affairs Committeeの
ような活動が世界中で、もっと活発で、有効に機能すれば、それらをチェック
できたのではないか、と。

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