山岸健名誉教授の三田の山2007/04/07 07:03

3月31日、三田の旧図書館前の桜

 山岸健名誉教授は、三田の三人の恩師の名を挙げた。 佐原六郎先生、奥井 復太郎先生、有賀喜左衛門先生。 佐原先生は社会学・社会心理学、『塔の研究』 という名著があり、有賀先生は家族研究の大家、奥井先生は都市研究という新 しい学問を開いた慶應義塾創立100年の時の塾長、来年は150年、歳月の流れ は早い、と。 (私も奥井先生の「都市社会学」の講義を聴いた。江戸から明 治への東京の移り変わり、さらに関東大震災を境にした大変化、腰弁と呼ぶサ ラリーマン層・山の手の登場などのお話が記憶に残る) 三田キャンパスの旧 図書館外壁の時計の文字盤に(各正時に11文字の)TEMPUS FUGIT「時は過 ぎゆく」とあり、12時にあたるところには砂時計がデザインされている。

 昭和29(1954)年、二年生になって三田に来た時、三田通り側の校舎の窓 からは海が見えた、品川の海、房総半島。 三田通りには都電の3番が走り、 銀杏並木があった。 その後建った東京タワーは、三田通りによって支えられ ている。 今、三田に帰ってきて、西校舎の517番教室で講義をしている。 西 校舎と同じく創立100年記念で建てられた南校舎、最近できた東館、北新館。  東西南北が校舎の名前になっていて、演説館や旧図書館のような古い建物もあ る。 これほど面白いトポス(場所)はない。 空間が何によって、どのよう に意味づけられているかが重要だ。 物事はカオス(混沌)的だが、コスモス は秩序づけられていてビューティフルである。

 (昨日みたように)人間は支えがないと生きられない。 ちょっとした草花、 西脇順三郎先生なら雑草。 バラ、アネモネ、あらゆる草花の恩恵にあずかっ ている。 犬、猫、小鳥。 人間は風景によってサポートされている。 あら ゆる窓は風景である。 「都市は自然的景観に対して社会的景観である」(奥井 復太郎) 支えるための、いろいろな道具がある。 小説、絵画、音楽、なか でも音楽は決定的である。