さん喬の「鴻池の犬」2009/12/04 08:02

 江戸蔵前の池田屋という乾物屋の店先で、あくびをしていた小僧の貞吉が「旦 那、大変です、捨て子です」と騒ぎ出す。 黒、ブチ、白、三匹の子犬だった。  旦那が「可愛いな、捨ててきな」というのを、貞吉が自分が世話をするからと 頼み込んで、飼うことになる。 可愛い犬がいて、店が繁昌するようなことに なる。

 黒を貰いたいという人が現れて、旦那が貞吉に因果を含めるのに二三日かけ ていた後で、紋付羽織袴に白扇、主人からと角樽、酒の切手三升、反物が三反、 お椀代を持ってやって来る。 池田屋は、界隈でも顔を知られた池田屋だ、犬 をやるのにそれは貰えない、持って帰ってくれと、断わる。 相手は船場・鴻 池善右衛門の江戸の出店の束ねをしている藤蔵と名乗る。 ぼんの黒犬が火事 で死に、似たのはイヤ、焼けた犬でなければと、言う事を聞かない、首に月の 輪の模様がある黒犬でなければ駄目なのだ。 訳を知り、人助けと思ってとい われ、池田屋は承知する、酒は小僧の父親が酒好きだから、と。

 黒は、羽二重の座布団を敷いた駕籠に乗り、大坂まで行った。 医者が三人、 警護が二人付いて、月に一度は有馬温泉へ行くという暮し、ぶくぶくに太って 大きくなり、もとは江戸で気ッ風がいいから、船場界隈で犬のもめ事があると 仲裁を頼まれるようになった。

 一方、江戸の弟、ブチと白は、小僧の世話が間遠になり、表で餌をあさる始 末。 往来に芋の落ちていたのを、弟のために拾ってやろうとしたブチが「キ ャン」、大八車に撥ねられて死に、白は一人ぼっちになってしまった。 拾い食 いで毛も抜けて、哀れな姿、そうだ、兄ちゃんのいる大坂へ行こう。 途中で、 旦那が足を悪くして、その代わりに伊勢めえり、おかげ参りに行く「おかげ犬」 のハチと会い、人々に大事にされる「おかげ犬」と道連れになったおかげで、 なんとか船場にたどり着く。 さん喬は、この苦難の道中を、まるで人間のそ れのように語って、しんみりと聴かせた。

 江戸から来たという汚い犬、蔵前の池田屋、隣は酒屋、前は荒物屋というの で、「兄(あん)ちゃん」「弟の白や」となる。 「しい、こいこい」と呼ばれ て、黒はどんどん、ご馳走を運んできてくれる。 鯛の浜焼き、鰻(う)巻き に、カステラ。 兄ちゃんもどうかというと、俺はいつも食っているから今日 は柴漬でお茶漬だ、と。 また「しい、こいこい」の声、黒が飛んで行くと、 ぼんのおしっこだった。

コメント

コメントをどうぞ

※メールアドレスとURLの入力は必須ではありません。 入力されたメールアドレスは記事に反映されず、ブログの管理者のみが参照できます。

※なお、送られたコメントはブログの管理者が確認するまで公開されません。

※投稿には管理者が設定した質問に答える必要があります。

名前:
メールアドレス:
URL:
次の質問に答えてください:
「等々力」を漢字一字で書いて下さい?

コメント:

トラックバック