「恋する日本語」クイズの答、残り2011/02/25 07:05

6.「那由他」(なゆた)…極めて大きな数量。古代インドの数の単位。千万ま たは千億に当たるなど、諸説がある。 *数の単位。10の60乗。一説に10 の72乗。

7.「紐帯」(ちゅうたい)…(ジュウタイとも読む。「ひもとおび」の意から) 二つのものを結びつける役割をなしているもの。 *社会の構成員を結びつけ て、社会をつくりあげている条件。血縁・地縁・利害など。社会紐帯。

8.「喃喃」(なんなん)…ぺちゃくちゃしゃべる様子。くどくどしく言うさま。  *男女のひそひそ話。 *読書の声。

9.「偶・適」(たまさか)…思いがけないさま。たまたま。『万葉集』(十一) 「偶にわが見し人をいかならむ縁(よし)をもちてかまた一目見む」 *まれ であること。めったにないこと。 *万一。

10.「相生」(あいおい)…一つの根から二本の幹が相接して生え出ること。 二つのものがともどもに生まれ育つこと。 *「相老い」の意にもかけ、夫婦 がいっしょに長生きすること。『古今和歌集』(序)「高砂・住吉(すみのえ)の 松も相生のやうに覚え」

ある小さなスズメの生涯<等々力短信 第1020号 2011.2.25.>2011/02/25 07:09

 ロンドンがナチス・ドイツの、うちつづく熾烈な空襲にさらされ、市民たち は疲れ果てて、暗い日々を送っていた。 二年前に夫をなくしたピアニストの クレア・キップス(50)も、防空対策本部隣組支部の市民防衛隊の一員として、 攻撃に備え、防空監視所へ寝ずの当番に出かけることが多かった。 彼女は二 か月ほど前、市民防衛隊帰りに、玄関先で生まれたばかりのスズメを拾った。  温かいフランネルでつつみ、数分ごとに温かいミルクを一滴ずつ与え、プディ ング用の小鉢の内外を毛糸で覆って、寝かせた。 夜の内に死んでしまうだろ うと思っていたら、翌朝、かすかだけれど絶え間のない声が聞えた。 小鉢の 中で、いきいきとした生命力を見せ、朝食をねだった。 それ以降、スズメは 間断なく餌をねだり続け、すくすくと育ち、元気な雛鳥に成長する。 クレア を何の疑いもなく、自分の保護者として受け入れ、彼女の枕の上に置いた古い 毛皮の手袋の中で眠り、夜明けにチュンチュン騒いで、彼女の毛を引っ張って 起しては、朝食をせがむようになった。 彼女が家にいる間は、クレアを呼ん で部屋から部屋へしつこくついて回った。 ただ彼は右の翼が正常でなく、「扇」 状で飛べず、左足も変形して曲がりこんだ蹴爪(けづめ)だった。 自然界で は、生き残ることが困難だったろう。

 クレア・キップス著・梨木香歩訳『ある小さなスズメの記録』「人を慰め、愛 し、叱った、誇り高きクラレンスの生涯」(文藝春秋)は、素敵な本だ。 最も 空襲が激しかった時期、芸をおぼえた彼は、市民防衛隊の重要なメンバーとな り、家や全ての持ち物を失った人々、子供たちを始めとする、多くの人々を慰 め、楽しませた。 あの過酷な月日を、彼ほど忠実に、そして着実に、自分の 国に仕えたスズメは、未だかつて一羽もいなかった、とクレアは書く。 「俳 優としての生活」の次の章は「音楽家としての生活」だ。 ピアニストのクレ アが毎日練習をするので、彼は歌を歌うようになる。 年中、シンプルなのと、 より複雑な(二つの八分音符のトリルを付け加えた)二種類の歌を…。

 クラレンスは、なんと12年と7週と4日を生きた。 私より一つ年長の、 このスズメの老いの日々には、教えられることが多い。 11歳の誕生日を過ぎ た頃、彼は卒中で倒れ、麻痺が残る。 クレアと獣医の努力が続く。 絶望に 陥った時、匙一杯のシャンパンが奇跡的に彼を救う。 自らリハビリに努めて、 老衰と闘う身体訓練を続けるようになる。 老化に屈することなく、その状況 に自分を適応させ、(当然)愚痴をこぼさず、味わえる限りの生の歓びを享受し、 精一杯の活動を楽しんだ。