「鮟鱇」と「煤払」の句会2011/12/13 04:39

 8日は、今年最後の「夏潮」渋谷句会だった。 東日本大震災の影響で3月 と4月は中止、5、6、7、9月は、別会場をさ迷った。 2月は新年会、8月は 稽古会があって開かないので、8回の開催となった。 この日の兼題は「鮟鱇」 と「煤払」、楽しい句が続出し、主宰に「面白かった、兼題の選択もあって…」 と言って頂ける句会となった。 私が出したのは、つぎの七句。

 鮟鱇や八つ裂きにして七に分け

 鮟鱇によく似た顔の人に会ふ

 鮟鱇のごと住み居りぬ街の底

 鮟鱇や醜きほどに美味ならん

 煤払員数外と見做されて

 物干で新聞を読む煤払

 煤掃きや坊主小坊主頬被り

 結果は、主宰選4句、互選8票。 7月の「昼寝」と「箱庭」あたりから、 好調が続いている。 ずっとフロックだと思っていたが、こう続くと、そうで はないかもしれない、と心の隅で悪魔が囁く。 自己分析すると、子供に還っ たような、素直な句になっているのが、いいのかもしれない。 なるべく5W1H の解説散文路線から離れ、ひねらないようにしているのが…。 古希になって、 十年遅れの「本卦還り」か。

 採ってくれたのは、〈鮟鱇や八つ裂きにして七に分け〉梓渕さん・ひろしさん、 〈鮟鱇によく似た顔の人に会ふ〉主宰、〈鮟鱇のごと住み居りぬ街の底〉主宰・ 梓渕さん・良さん・善兵衛さん、〈鮟鱇や醜きほどに美味ならん〉淳子さん、〈煤 払員数外と見做されて〉主宰、〈煤掃きや坊主小坊主頬被り〉主宰・淳子さん・ 善兵衛さん。 「八つ裂き」の句は、計量経済学専攻(笑)の理屈がつい出てし まったのだが、よく採って下さった。

 主宰の選評。 〈鮟鱇によく似た顔の人に会ふ〉…本当にこういう人がいる。 口などを詠んだ類句もあったが、これが一番単純ですっきりしていた。シンプ ルな方が効果がある。 〈鮟鱇のごと住み居りぬ街の底〉…それぞれの個性に 合った句が出るのが、句会の幅につながる。「居りぬ」、自と他の区別がはっき りしないので、一工夫要す。「居りて」か。 〈煤払員数外と見做されて〉…自 分の言葉で詠んでいる。「員数外」は、ある世代以上なら分かる古い言葉。一種 の処世術を、さらりと詠んで、嫌みがない。 〈煤掃きや坊主小坊主頬被り〉 …リズムで採らせる句。ちょっと滑稽、坊主小坊主があの頭に頬被りしてゾロ ゾロと、歌舞伎の舞台にありそうな。いつにかかってリズムによる。