隅田川馬石の「締め込み」2007/07/22 06:30

 五街道佐助改め隅田川馬石(ばせき)、鼻の下のホクロが目印、柿色の着物に 紋付の黒い羽織、すっきりとした姿形、真打になりたての初々しさがいい。 今 日は大安だという。 住み込んでいた師匠雲助の家を出たばかりの頃、おかみ さんからお米を取りに来るようにいわれた。 まだ合鍵を持っていたので、お かみさんが出かけるという夕方五時過ぎに勝手口から入り、電話で教わった納 戸から5キロの袋を二つ持って出ようとしたら玄関が開いて、中学生の娘さん が帰ってきたのと、鉢合わせした。 そんな話をして、足のめっぽう速い奴が、 泥棒を追いかけていて、追い抜いてしまう間抜けな小噺から、間抜けな空き巣 の噺に入った。

 位が器を大きくするということがある。 「締め込み」は得意ネタで、数え 切れないほど演ってきたともいうが、素晴しい高座だった。 空き巣が台所の 揚げ板の下に隠れて、糠味噌くさいので、蓋を取り、いい糠床だ、というあた り。 この家の主人八ッつぁんが帰ってきて、風呂敷包みを見て、気づき、か かあ、男をこしらえたな、と怒る顔。 夫婦喧嘩になってからの、おかみさん の啖呵、出てけ、出てけって、寄席で打つ太鼓じゃあないよ、おまえさん、お 稲荷さんの鳥居にしょんべんしたんじゃあないの。 八ッつぁんの投げた鉄瓶 の湯が揚げ板の下にたれてきて、たまらず飛び出した泥棒が、両手をかざして、 まあまあ、どうどう、と静める身振り。 仕込んでおいた糠味噌を、泥棒がお かみさん、糠味噌をかき回したほうがいいですよ、というところ。 そんなど れもに感心した。 隅田川馬石、大きな名前になるかもしれない。