鳥居泰彦さんの「『実業論』百年」 ― 2009/06/13 05:39
これは書こうか、書くまいか、迷ったのだが、敢えて書くことにした。 「鳥 居先生」というのは、鳥居泰彦元塾長、小尾ゼミの先輩である。 塾長当時の 1993(平成5)年12月11日、同じ福澤諭吉協会の土曜セミナーで「『実業論』 百年」という講演をしている。 土曜セミナーは1973(昭和48)年11月10 日、三田の塾監局で開かれた芳賀徹さんの第一回のそれから、ほとんど聴いて いるというのが自慢の私が、聴いていないはずはない。 鳥居さんも、まずい 男に高田晴仁さんの話を聴かれたものである。 運が悪かったと思って、あき らめてください。 高田さんに責任はない、それを書いた私が悪いのである。 重ねて確認しておくが、「実業論」(明治26年3月30日~4月15日)が書か れたのは、高田さんのいう「延期派勝利、そして転回への兆し」の時期である。
『福澤諭吉年鑑21』(1994年福澤諭吉協会)に載っている講演記録を見ると、 問題の個所は、こうなっている。 「「士流学者」の役割」という小見出しの後 だ。 「次に先生は実業を盛んにするためには民法と商法が大事だと言われま す。一年前の明治25年11月24日に民法、商法の施行を延期する施行延期法 が公布されましたが、先生はこのことに神経を苛立たされたのではないかと想 像します。「日本の実業が、士族学者流に忘れられて精神の遅々たるは、単に其 渋滞振はざるの不幸よりも尚ほ一歩を進め、他の精神上の発達に対して伴ふを 得ざるが為めに却て意外の災を被るの情あるが如し」と言われ、その後に「例 えば」と言って、「近来論に喧しき民法商法の如き、其法文にも多少不行届の点 はある可きなれども、之を断行して人事に益す可きは固より論を俟たず」と、 なぜ施行を延期したのだと婉曲に言っておられます。」
鳥居さんも、福沢の「君子豹変」には、一本取られたのである。
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