「実学」と小尾恵一郎語録2009/06/23 07:15

 清家篤さんは、ここから「実学と小尾語録」の話に移る。 「鳥に生まれ変わってしまう」 人類は実感からいえば絶対に天動説なのに、 その実感とは全く反対の地動説を、最後には科学的に理解し、受け入れた。 経 済学も、実感に惑わされず、人々に経済の本当の姿を伝えることのできる科学 (サイエンス)でなければならない。 プラトンの『ティマイオス』に、直接 見ただけで真実が分かると思う人間は、おっちょこちょいだから、次の世では 鳥に生まれ変わってしまうとある、と。

「経済学に客はいない」 小尾先生に「経済学者は誰にも喜ばれない職業で あることを覚悟しなければならない」と言われた。 経済学の場合、その研究 成果が社会的に有用でも、だれにも喜ばれないことがある。 小尾さんの研究 業績の一つに、女性の就業についてのダグラス・有沢法則にもとづいて、より 精緻な労働供給モデルを構築したことがあった。 「夫の賃金が低いほど妻が 働く確率が高くなる」というものだが、夫には屈辱的だし、女性の就業拡大の 意義を低めるものだといったかたちで、女性からも反発をかうおそれがある。  労働市場底抜けの危険を防ぐという社会全体の利益のためにはかなっていても、 関係者の誰からも喜ばれる種類の分析結果とはならないわけだ。