一之輔の「めがね泥」2013/06/05 06:49

 一之輔、昨年真打になったが、その前に一人とち狂ったのが来て、弟子にし てくれという。 また来てくれ、と言ったら、「二度手間だ」と。  落語は難しい、空気を読むのが大事。 浅草の観音様に泥棒に入り、お賽銭 を風呂敷包みにして、仁王様につかまる例の小咄をやる。 この小咄で、これ ぐらい受ければと、空気を読むのだ、と言う。

 何でも訊いて下さい、親分。 新米、この町内は明るいのか? 昼間は、明 るい。 金のある家はないか? 突き当たって右へ三軒目、伊勢屋というのが。  有り金はあるか? 有り金って、何ですか? かたまった金だ。 鍋、釜、ザ ルならあります。 金物屋じゃないか。 東京メトロの、茶色い婆さんの肌色 みたいな線、有楽町線で東池袋という所で降りて、高い建物の右の方へ行くと、 かたまった金があります。 あれは造幣局だ。 年寄が二人だから、いいかと 思ったら、爺さんが警察学校で柔術教えていて、お婆さんが鎖鎌を使う。

 お前のは、みんな駄目だな、俺が目を付けたのは眼鏡屋だ。 新米と親分と もう一人、三人の泥棒が眼鏡屋へ行く。 「ガミハレ」というのは、頑張れじ ゃなくて、泥棒の符牒で、中を覗くことだ。

 眼鏡屋では、小僧の貞吉が一人留守番をして、手習いの稽古をしていた。 静 かなので節穴から覗けという泥棒の話が聞こえた。 それで七人の影武者がい たという平将門の「将門眼鏡」を、節穴の下の桟の上に置いた。 泥棒が覗く と、七つ、八つに、三重、四重に増えて見える。 エーーッ、学校ですよ。 子 供達が大勢で、手習いをしている。 今時分、学校があるか。 夜学です。 規 律の取れた学校だな。

 新米が覗くと、虫眼鏡。 貞吉が、顔にヒゲ、モミアゲもモジャモジャに描 き、虎のような恐い顔にした。 ワーーッ、化け物屋敷だ、大入道がいる、金 棒を持っている、学校じゃない、大入道が手習いの稽古をしている。

 遠眼鏡に替えると、親分が覗いた。 (扇子を遠眼鏡にして)これは扇子、 ひっくり返すと、遠くに見える。 エッ、ンーーン、やっぱり眼鏡屋だが、今 何時だ。 夜中の三時です。 入らねえで、引き上げるぞ、あんなに廊下が長 いんじゃあ、奥まで行くのに、夜が明けらあ。

 これも初めて聴く噺だったが、つまらなかった。 書いてみると、飛躍や意 味不明のところがあり、一之輔にも責任の一端はあったかと思われた。