白酒の「首ったけ」本篇 ― 2013/06/08 06:34
遊びの世界、江戸には「廻し」というものがあった。 「廻し」について、 考えは二手に分かれる。 もてる人は、あった方がいいといい、もてない人は、 ない方がいいと言う。 食券持って、お店出されるようなものだから。 紅梅 の野郎、大引け過ぎというのに来ねえな。 向うの座敷が五月蠅い、ドッタン バッタン、いつまで騒いでんだ。 今のは紅梅じゃないのか。 ちょっと顔出 せばいいじゃないか。 明日仕事なのに、勘弁できねえ、もう帰えるよ。 「廻 し」は、この里に不可欠のものでして…。 うるせえ、ケツに深いも、浅いも ない。 お一人様ですか、お気の毒で。 悔やみは言うな。
(紅梅が顔を出し)ちゃんと寝といで、野暮じゃないんだから。 こんな所 で寝るんなら、お寺で寝ていた方が静かでいい。 じゃあ、お帰りよ。 腐っ ても客だ、勘定してもらおうか、泥棒じゃないからな。 二度と来るもんかと、 飛び出した。
大引け過ぎ、真っ暗だ。 向かいの家から明かりが洩れている。 ごめんよ。 グーーッ。 寝たふりするな、ちと頼みがある。 おや、あなたはお向かいの 紅梅さんのいい人の辰っつあんじゃないですか。 そこらで寝かせてもらいた い。 あっしは寝ずの番、紅梅さんの辰っつあんが、二度とあちらにいらっし ゃらない。 実はウチの青柳が辰っつあんに惚れてるんで、ぜひお登楼(あが) りを。 首ったけ、大変なもの。 本当か。 いいわよ、お酒と、台の物を。
(前の楼(うち)に見せびらかして…)部屋着の半纏、見ろ見ろ、綿入り半 纏だ。 こっち来てよかった、馬鹿ーーッ。 まるで、子供の喧嘩。 AKBと モー娘、目くそ鼻くそ、そういうんじゃないか。
ぶつけてるぞ、吉原見当だ。 青柳のところへ行かなきゃあ、と大門へ。 跳 ね橋を落ち武者のような遊女たちが渡って逃げて来る。 一人が鉄漿溝(おは ぐどぶ)に落っこった。 お前は、紅梅だな。 辰っつあん、助けて。 死ん じまえ。 今度ばかりは、この通り、首ったけだよ。
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