ネットに負けない店をめざす銀座・伊東屋2015/07/18 06:33

 開店日の6月16日に「新装開店の銀座・伊東屋を覗く」を書いた伊東屋が、 テレビ東京7月2日放送の「カンブリア宮殿」に登場した。 2013年6月、 大塚宣夫さんの青梅慶友病院を取り上げた、作家村上龍と小池栄子が司会の番 組である。 私が内覧会を覗いて感じたことで、当っていたこともあったし、 疑問に思った点もよく説明されていた。

 私は「ゆったりとスペースをとり、選りすぐりの品を「見せる」ことに主眼 を置いているようだが、一口に言って、従来の豊富な「品揃え」という利点が 失われている感じがした。 長年、伊東屋へ行けば、いろいろ見比べて好みの ものを選べる、珍しい面白いものが発見できる、と思っていたからである。」と 書いた。

 伊藤明社長は、「品揃えの多さ」では勝負していない、「品揃えの良さ」で勝 負している、という。 長く使える、飽きがこない、修理ができる、そうした 基準で品物を選んでいる。 買った人が、長く愛着が持てるか、仕事の環境な ど何かを創造する時に、彩りが与えられるか、その時、気持が前に向くような 商品を集めている、と。

 伊藤明社長は、「ライバルはITだ」と言う。 ネット通販の台頭で、モノを 探すには検索すればよくなった。 アマゾンは文房具だけで、約130万点を揃 えている。 客は伊東屋に来る必要がない、という危機感が、2年半かけた本 店のリニューアルとなった。 商品数は15万点を4万点に、1/3以下に減ら した。 商品がいっぱいあっても、客との出合いがなければ、買わない。 商 品は少なくても、良いものを選んで、お客の目につくことが大事。 従来の敷 き詰めるような陳列から、厳選したモノを客が一つ一つ手に取れるようにした。  今回は割り切って、検索ではなくて、体験する場所にすることを選択した。 空 間と仕組みを相当考えて、そこで過ごせる場所をつくりたい、ここで仕事がで きる、長くいたらどうなんだろう、と。 客は、どっちみち、あまり買わなく なったけれど、買うなら満足したい所で買う。

 実店舗にしかできないことを考えた。 ユーザーにダイレクトに届けること を意識した店づくりだ。 万年筆は1500種、高級筆記具だけで売上高の25% を占める。 自らも文房具好き、万年筆をコレクションする伊藤明社長、文化 とは文字化すること、書いて残っていないと「文化」はないと聞いて、あっ、 すごい商売をしているんだ、と思ったそうだ。 テレビ番組を、文字化するの も「文化」だろうか。

 なお、2012年にオープンした一本裏の道の別館K.ITOYAは、「大人の隠れ 家」がコンセプトだそうだから、K.は「隠れ家」らしい。