柳亭市弥の「芋俵」 ― 2019/02/23 07:15
20日は暖かかったが、夜は雨になるかも知れないという日で、第608回の落 語研究会だった。
「芋俵」 柳亭 市弥
「虱茶屋」 柳亭 こみち
「宿屋の富」 古今亭 志ん陽
仲入
「寄合酒」 三遊亭 萬橘
「芝居の喧嘩」 春風亭 一朝
市弥は垂れ目、寄席では泥棒の噺は縁起がいいという、客の懐を取り込むか ら。 泥棒で有名なのは石川五右衛門、その弟子に二右衛門半、そのまた弟子 は一右衛門、そのまた弟子が無(なし)右衛門で、本名は長十郎、生れは二十 世紀。 私はわからなかったんで、師匠の市馬が暇そうで、機嫌のいい時に、 この小咄について聞いてみた。 師匠は、ガキの時にラジオで聴いて大笑いし た、と。 で、どういう訳なんですか? 一週間、口を利いてもらえなかった。
私みたいな、間抜けな泥棒のお噺で。 兄ィ、世の中不景気で、泥棒も足の 洗い時かもしれない。 真面目にやっていれば、いいことがあるよ、政府だっ て黙っていない、補助金が出るかもしれない。 仕事なんぞ、どこにだってあ る、近所にも、隣町三丁目の木綿問屋、金持だ。 仲間内じゃあ、手をつけら れないという評判だ、奉公人が多くて、締まりが厳重だ。 中から開ければい いんだ。 空きの芋俵をお前と俺でかついで行く。 芋問屋で芋俵を買って来 たが、釣銭をもらうのを忘れたから取りに戻ろうって、大声で言うんだ。 預 かってもらえないでしょうか、と預ける。 取りに行かないと、心配だから、 店の中に入れるだろう。 俵の中には、お前がいる。 お前が先棒をかつげ、 俺が後棒をかつぐ。 無理だ、俺は昔から不器用だ、俵の中に入って、先棒な んかかつげない、役者が一枚足りないんじゃないか。 あそこに松公が行く、 あいつでいいな、少しポーーッとしているけど。
おーい、松公! アッ、泥棒! 本職つかまえて、言うな、すぐそこが交番 だ。 じゃあ、聞いてくらあ、今の、聞こえたかって。 馬鹿、いい仕事があ るんだ。 耳貸せ、お前が俵の中に入るんだ。 面白いね、ハハハ、泥棒しよ うってんだな。 仕事と言え。 泥棒の仕事。
狭いな。 さんだらぼっちをかぶせ、紐をかけて。 よいしょ、重いな。 よ いしょ、よいしょ、はいよ、はいよ! 俵の中は、足が痛いよ、外が見える、 タバコ屋のおばさんだ。 おばさーーん! キョロキョロしてる。 酒屋のシ ロだ。 俵から手を出すな。 兄ィ、すまねえ、芋問屋で釣銭をもらうのを忘れ ちゃった、この店の人に芋俵を預かってもらおう。
町内の若い者二人です、芋問屋で芋俵買って来たんだが、釣銭をもらうのを 忘れたんで、すぐ取りに戻りたい、芋俵を預かってもらえませんか。 それは 難儀なことで、ウチもすぐ店を閉めなければならない。 間に合わなければ、 明日の朝来ますから。 預かるとも預からないとも言わない内に、二人で置い て行く。
おい、貞吉、さっきの若い二人は来たか。 来ない。 その俵、店の中に入 れてくれ。 重いだろうから、転がして。 今、イテエ、イテエって、いいま した。 目が回るって、いいました。 貞吉が立て掛けたから、松公は俵の中 で逆さまになったが、ガマンした。
小僧と女中が話している。 ちょいと、貞どん、みっともないよ、コックリ コックリして。 お清どんも、お辞儀の稽古かい。 旦那がなかなか寝ないん だ、碁のお客さんの時は。 あのお芋を食べよう、薄く切って。 あたいが立 て掛けたから、お清どん、俵の間から手を突っ込んで。 ウエッ、このお芋、 あったかいよ、焼芋の俵かね。 おかしいよ、へこむよ、腐っているのかな。 またぐらをかきまわされた松公、グッと力を入れて我慢したから、大きいヤツ を一つ、ブゥッー!! ワァーッ、気の早いお芋だ。
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