北沢楽天デビュー政治漫画の発見2021/12/17 07:10

 さいたま市立漫画会館でもらってきた北沢楽天顕彰会会報『らくてん』第59号(2020年3月1日)に、北沢楽天が横浜居留地で発行されていた週刊誌『ボックス・オブ・キューリオス』でデビューした時の作品が発見されたというニュースが出ていた。 楽天が18歳から4年間在籍した『ボックス・オブ・キューリオス』に描いた漫画は、横浜の日本新聞博物館にもなく、1枚でも見つからないかというのが長年の懸案だったという。 特に、楽天が昭和11年10月1日発行の雑誌『東陽』に書いた「明治時代の漫画~東京パックを中心とせる」という文章にある「筆者楽天も米国人イー・ヴィー・ソーン氏が横浜に発行せる週刊新聞『ボックス・オブ・キューリオス』に講和の三面李鴻章の題下に、日本に哀願する一面西太后にさらに一面列強に哀願する李爺の窮状を描いて初めて漫画界にデビューした」作品については、確認できないことを、2019年4月に顕彰会編著『北沢楽天 : 日本で初めての漫画家』でも無念な思いを記していたそうだ。 発見された「三面李鴻章」の題の絵が『らくてん』に掲載されている。 線描のいわゆる漫画でなく、普通の描写された絵で、「三面」とは、興福寺の阿修羅像のような三つの顔を持つ李鴻章が、正面の伊藤博文に、左の西太后に、右の西洋人に哀願している。

 発見したのはオーストラリア人のロナルド・スチュワートさん(以下、ロンさんと略す)で、2019年に大英博物館で開催された「日本の漫画展」のシンポジウムで発表された。 ロンさんは大学で美術を学び、日本語も学んで語学教師の資格も取った。 卒論に日本の政治漫画を通して明治時代の研究を書きたいと、1995年に交換留学生として上智大学に来て一年間研究する過程で、北沢楽天に最初西洋漫画のテクニックを教えたオーストラリア人の漫画家ナンキベルを知った。 1998年に文部科学省の奨学生として再来日し、本格的にナンキベルを追っかけてきた。 今は大東文化大学で教職に就いている。

ロンさんは、2018年に若いアメリカ人の漫画史研究家アンドレア・ホビンスキーさんの田河水泡や柳瀬正夢についての発表を上智大学で聴いた後、彼女から北沢楽天の新聞漫画に関する資料をカリフォルニア大学のバークレー校で見たとの情報を得た。 バークレー校図書館のサイトで一つの記録を見つけたので、ついでに全世界の加盟図書館の調べられる「ワールドキャット」で、各図書館をしばらくの期間、さまざまなキーワードで検索していた。 そして、ドイツのバンべルク州立図書館で「yokohama」を検索したら、『ボックス・オブ・キューリオス』が出てきた。 しかも、1891年から10年間の新聞のほぼ全ページをスキャンした画像をインターネットで見ることが出来ることが分かった。 机を叩いて飛び跳ね、「有ったぁ!」と叫んだという。

一段落してから、顕彰会編著『北沢楽天 : 日本で初めての漫画家』が残念がった1895年4月20号の北沢楽天デビュー政治漫画を発見し、また、「有ったぁ!」と声を出してしまったそうだ。