文菊の「稽古屋」後半 ― 2012/12/08 06:52
師匠に八五郎、脇で粋な年増が貢いでくれるようなのを、教えてもらいたい と頼む。 清元の「キセン」。 蒸気船? 「喜撰」、おしょさん、お願いしま す(と、声をかけると、三味線が鳴る)「♪世辞で丸めて浮気でこねて、小町桜 の眺めに飽かぬ…」。 後に続く八五郎、調子っぱずれで、一息に一本調子に、 歌う。 息継ぎがある、節がついている。 (と、言われて、八五郎、浪曲の 節で)「次郎長親分、次郎長親分、あーー、どっこいしょ」。 脇で、待ってい て下さい、子供衆の稽古がつかえていますから。
みぃちゃん、ご挨拶、手を三角にして、そう、「道成寺の手鞠歌」テントテツ ン、そこは斜すっかいに、寄席行くと円菊さんっていう人がいるけれど…。 何、 袂(たも)がブラブラしているのは、お芋、いけません、そんなもの持ってき ちゃあ。 脇に置いて。 はい、お鞠をついて、回って。 はい、そうよ。 み ぃちゃん、どうしたの、急に泣き出したりして。 そこのおじさんが、私のお 芋食べている。
はい、二度目のテントテツン、ちょいちょい、みぃちゃん、何、急に笑い出 したりして。 そこのおじさんが、鉄瓶で、雪駄乾かしている。 さっき、立 小便したら、ひっかかったので、乾かそうと思って。
三度目のテントテツン、かむろ、可愛らしく…。 よく出来ました、ご挨拶、 そう、手を三角にして。 おいちゃんの番です。 もっとやさしいのを、お願いします。 では、上方 の二上がりの曲で「すりばち」、「えー、海山を越えてこの世に住みなれて、煙 が立つる、しずのめの……」、風に向って大きな声を出せば、声がふっ切れるか ら、と教わる。
八五郎は、その晩、大屋根のてっぺんに登って、さっそく声を張り上げた。 「煙が立つゥ、煙が立つーゥ」と、がなっているので、近所の連中、「しようが ねえな。この頃は毎晩だな。おーい、火事はどこだー」 「煙が立つーゥ」 「だ から、火事はどこなんだ」 「海山越えて」 「そんな遠くっちゃあ、行けね えや」
文菊、真打昇進襲名披露をしたばかりというのに、次に出た立川生志が立川 流入門二十年の真打昇進試験で苦労した歌舞音曲を、かなりの程度マスター(私 に判断する素養はないが)しているように見えた。 みぃちゃんの踊りのとこ ろをゆったりとやったあたり、大したものだと思った。
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