「数へ日」と「寄鍋」の句会2012/12/17 06:51

 13日は、今年最後の渋谷句会、兼題は「数へ日」と「寄鍋」で、私はつぎの 七句を出した。

数へ日の暦の曲り直しをり

数へ日や為残せし事あれやこれ

数へ日に映画観るのは悪い癖

数へ日に「芝浜」を聴き涙かな

日曜日あれにするかと寄鍋に

寄鍋の湯気の向うの笑顔かな

近江路や赤蒟蒻が寄鍋に

 私が選んだのは、次の七句。

数へ日の町にプロレスやつて来る      英

数へ日やプレハブ事務所灯がともる     やすし

寄鍋の果ては雑魚寝といたさむか      ひろし

寄鍋の仕度してあり母の家         英

寄鍋に足すいささかの釣果かな       英

寄鍋の蓋とれば皆覗き込む         ひろし

寄せ鍋や盃を享けつつ仕切りつつ      なな

 結果は、〈数へ日の暦の曲り直しをり〉を梓渕さんと淳子さん、〈数へ日に 映画観るのは悪い癖〉を英主宰、〈寄鍋の湯気の向うの笑顔かな〉を主宰と淳 子さん、〈近江路や赤蒟蒻が寄鍋に〉を主宰と耕一さんが採ってくれた。 互 選は3票と少なかったものの、主宰選が3句で計6票、まずまずというところ であった。 私も主宰の句を3句、ひろしさんを2句採っていた。

 主宰の選評。 〈数へ日に映画観るのは悪い癖〉…「爪を噛むのは悪い癖」 という歌があった。いくつも映画館のある大都会、若い頃遊んだ人の句、試験 の前にも観ただろう。〈寄鍋の湯気の向うの笑顔かな〉…内容というより、も っぱらリズムの句。の、の、の、かな、で大団円となる。平凡でも、きれいな リズムに、日本の詩の良さが出る。あれこれひねって、いろいろな物を出すよ りも、するっとした句の方が上等。〈近江路や赤蒟蒻が寄鍋に〉…近江で寄鍋 の蓋を開けたら、異様なものが、ほー、ほー、これが話に聞く赤蒟蒻か。落ち 着いた大人の、趣味深い人の句という感じ。(過褒でも嬉しい。)