柳家喬太郎の「按摩の炬燵」前半2023/03/09 07:06

 喬太郎、膝隠しを置いたところに出て、どかり胡坐をかく。 膝の悪いのが慢性化して、今日は釈台を使うので、ご勘弁を。 大喜利の司会を、やろうってんじゃない、TBSで話すのも何だが…。

寒さ、今年程度じゃ、耳が切れるって程じゃない。 何でまた、小僧が集まって、私に話があるのか。 善どん、彦どん、勝どん、言いなよ。 番頭さん、寒くて辛抱が出来ません。 ご当家の蒲団は、センがなくてベエ蒲団、辛抱がなりません。 番頭さんから、奥に言って頂きたい、蒲団を一枚。 偉くなったものだ、奉公に来てるんだ、修業の身で、贅沢だ、生意気言うんじゃありません。

 番頭さんは、炬燵か、行火を入れていらっしゃるんだろう。 私も、奉公人だから入れたことはない、つまらぬことは言うな。 寝よか、寝よう、お休みなさいまし。 待ちな、待ちな。 そこに、お座んなさい。 寒いね、今年の寒さは格別だ。 今朝は、霜も降りてた。 奥へは、言いにくい、私は間に入ってるんで。 当家は、旦那も、お内儀さんも、いい方だ。

 ちょいと一杯ひっかければ、身体が温ったまる。 按摩の米市さんが奥に来ている。 今夜一晩だけ、米市さんに泊まってもらって、お酒を飲んでもらって、一晩、手なり、足なり、つけさせてもらおうってんで、頼んでみよう。

 米市さん、そこに座って、今日はこの後、何かあるの。 何もない。 たまには、泊って行かないかい。 ご当家に、あっしが……、どうせ帰っても、独り者で、せんべい蒲団の柏餅ですから。 皆さんもいいの、じゃあ、お言葉に甘えて。 一杯やってもらおうと思ってね。 盆と正月が一緒に来たようで。 寝るのは、番頭さんの部屋ですか。 寝た後に、頼みがある。 すみません、相手が番頭さんてのは、どうも……。 一晩、手なり、足なりをつけさせてもらおうというんで。 あっしを炬燵にしようてんですか。 私は、若い者、小僧が真似をするんで、今まで炬燵も行火も入れたことがない。 へい、わかりやした、喜んで炬燵になりましょう。

 火の熾し具合だが、五合、六合、炭からがんがんと。 五合、燗を付けて。 鼠入らずに、佃煮もある。 湯呑で。 番頭さんが注いでくれるんですか。 湯呑に指を入れて…、いい燗だ。 いただくよ、ワーーッ、入ってく、うめえな、こりゃあ! いい酒だ、アタピンじゃない。 上燗でございます、てえしたもんだ、徳どん、小僧さんなのにね、こういう燗がいい。