さん喬の「ちきり伊勢屋」(下)の(中)2007/02/05 07:40

 伝さんじゃあないか、と声をかけてきたのが、幼馴染の遠州屋の清太郎、吉 原に連れて行ってもらった清ちゃんだった。 噂どおり、生きていたんだ、と いう清ちゃんに、こんな乞食みたいななりでというと、みたいでなく立派な乞 食だ、と言われる。

清ちゃんは、この近くの赤羽橋に白井左近がいて、大道易者をしているとい う。 人のテンキ(転帰?)、死相を占って、易断を誤り、その財産を失わしめ たというので、お上が財産を取り上げ、家は取り潰し、江戸所払いになって、 赤羽橋にいるという。 伝次郎が連れて行ってもらうと、左近は「お前さんに 会いたかった、ご無事で何より、もう一度あなたの相を見たかった」と天眼鏡 で覗き、「天庭(額)に一点の曇りもない、不思議だ。 人の命を助けたことは ありませんか」。 心中の親子三人を助けた。 「それだ、あなたの死相は消え た。 辰巳の方角へ進めば、運が開ける」と、左近は二分包んで「どうぞ許し てもらいたい」という。

 辰巳といえば品川だ、清ちゃんは今、勘当されて品川の長屋にいるというの で、伝次郎はそこに居候をする。 二分の金を、二人でぶらぶらして使い果た すと、大家が店子の八五郎という駕籠かきが半年前に国へ行って帰って来ない、 遊んでいるのなら駕籠をかついだらどうだ、という。 札の辻で待っていると、 品川へ遊びに行く連中が乗るから、と。 「土蔵相模までやってくれ」と乗っ た最初の客、二人は重くてかつげない。 鉢巻の巻き方から身なりまで教えて くれた、その客は幇間の善平だった。 品川に客を待たせてあるし手持ちもな いのでと、質屋へ持っていくようにと、以前伝次郎にもらった上等の着物を脱 いで渡してくれた。

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