アメリカ人の反応と、『福翁自伝』の意義2007/11/11 08:15

 つぎにアルバート・クレイグさんは、西欧で『福翁自伝』はどのように受け 止められているか、ことに何年にもわたって読ませた学生たちの反応について 語った。 まず一様に適塾での生活の部分が面白いという。 強い目的意識と、 最大限の自由。 福沢は、freedom やlibertyという言葉に出会ったとき、適 塾での楽しい日々を思い出したのではないか。 そして、福沢の因習打破の姿 勢に好感を持つ。 少年時代から、迷信を信じなかったり、兄に聞かれて日本 一の大金持になってみたいといったりする。 学生たちは、型破りの男の話を 読んだと感じる。 一般の教養あるアメリカ人、スシを食べ、トヨタ・ホンダ に乗り、クロサワの映画を観たことのあるアメリカ人でも、福沢は知らない、 その自叙伝を読んだことはない。 『福翁自伝』を読むのは、日本を理解した い学者や日本史を学習している学生だ。

 クレイグさんは最後に、歴史としての『福翁自伝』の意義について、学者と しての個人的見解を述べた。 福沢諭吉は非凡な人。 明治維新前後の大きな 違いと変化、日本史の変革期があざやかに描かれている。 チャンスと自由を 生かして、日本人はハイレベルな文化を築いた。 日本のその歴史的発展は、 西欧とは違う。 西欧は、科学革命→啓蒙運動→産業革命と、順を踏んで発展 した。 日本の構造は違う。 その三つともなかった。 1860年代に近代化に 着手し、1870年代に啓蒙運動も科学革命も産業革命も同時に起きた。 福沢は 逸早く改革を理解し、それを著作に書いた、文明開化の有力な提唱者だった。  『福翁自伝』は、日本の開化の謎を解き明かすカギである。 政争にはふれて いないが、19世紀半ばの日本の文化的変化の内側を垣間見ることができる。  実際に体験した人間の臨場感にあふれ、ユーモアも、ユニークさもある。 こ れ以上は望みようのない本である。

コメント

コメントをどうぞ

※メールアドレスとURLの入力は必須ではありません。 入力されたメールアドレスは記事に反映されず、ブログの管理者のみが参照できます。

※なお、送られたコメントはブログの管理者が確認するまで公開されません。

※投稿には管理者が設定した質問に答える必要があります。

名前:
メールアドレス:
URL:
次の質問に答えてください:
「等々力」を漢字一字で書いて下さい?

コメント:

トラックバック