日本の牛肉は本当に世界一美味しいか?2011/10/19 04:54

 「初鴨」が元来食べ物だったというので、思い出した。 肉の話である。 よ く日本の牛肉は、美味しいと言う。 ステーキにしろ、すき焼きにしろ、霜降 りのブランド牛を食べたら、ほかの国の牛肉は食べられない、と言う。 アメ リカのステーキなど、でかいばかりで、まったく美味しくないと聞く。 だが 最近、日本の牛肉は世界一美味しいというのに対する異論を、二つ見聞した。  もしかしたら、日本の牛肉は世界一美味しいと、思い込まされてきたのかしれ ない。 原発安全神話のように…。

 一つは、NHK総合9月5日放送の『釣瓶の家族に乾杯』である。 バレー ボールの高橋みゆきをゲストに沖縄の読谷村に行った。 奥さんがウルグァイ から来て、大工の旦那さんが家を建てていたのがよくて、結婚したという家族 が登場した。 その奥さんが言ったのだ。 「一番食べたいのは、ウルグァイ の牛肉だ。 ウルグァイの牛肉は、美味しい。 日本の肉は、肉の味がしない」 と。

 もう一つは、青山潤著『うなドン 南の楽園にょろり旅』(講談社)だ。 この 本を読むきっかけは、8月3日の<小人閑居日記>「読みたくなるような本の 紹介」に書いた。 東京大学海洋研究所、うなぎ研究チームのリーダー塚本勝 巳教授は、青山潤さんを「ティラノ」と呼ぶという。 正統派肉食恐竜ティラ ノサウルスの「ティラノ」だ。 若き日に青年海外協力隊員として過ごした南 米・ボリビアが、青山さんを「ティラノ」にした。 南米の数ある旨い物や地 域・民族料理の中で、唯一、青山さんの心を打ったのが、牛肉だった。 媚び も衒(てら)いもない。 ただでっかい牛肉の塊に、岩塩をなすりつけて、焚き 火で焼いただけの「肉」だった。 広大な草原を勝手気ままに走り回り、時に は角突き合わせて喧嘩していた牛のなんと旨かったことか。 しかし、日本に 戻って牛肉を食べてみると、脂が強すぎて、あの感動を得ることができなかっ た、と青山さんは書いているのだ。