三遊亭歌奴の「鼓ヶ滝」2017/02/03 06:36

 歌奴というと先々代(中沢家の圓歌)の印象が強すぎる、現・歌奴は大柄、 丸顔だ。 相撲観戦、寅さん見ながら一杯飲むのが趣味だと言う。 昔の師匠 方は、俳句や川柳を詠んだ。 掛け取りを詠んだ、<大晦日どう考えても大晦 日>は、五代目小さん作。 長井好弘さんの『落語と川柳』を見ると、作風と 芸風は似てくる。 志ん生作、<干物ではサンマはアジにかなわない><ビフ テキで酒を飲むのは忙しい><気前よく金を使った夢を見た>。 好きな川柳 は、<土俵上日本人は行司だけ>(と、羽織を脱ぐ)。

 俳句や和歌は、季節感や風景を詠み込む。 ここが鼓ヶ滝か、弱ったな、歌 を詠もうと思うのだが、言葉が出てこない。 通りかかった樵(きこり)が歌 人と知り、歌が好きなので聞かせて下さいと。 歌人は、たんぽぽを「つつみ 草」ということを思いついて、<伝え聞く鼓ヶ滝へ来て見れば沢辺に咲きした んぽぽの花>と詠むことが出来た。

 暗くなってきたな、腹が減った、もう歩けない。 明りがちらちら見えた、 助かった。 道に迷った旅の者ですが。 どうぞ、囲炉裏のそばへ、顔色がよ くない、腹が減っているのでは、鍋の中に粥がある、五穀の粥、どうぞ、どう ぞ。 こんな美味いものは、初めてです。 婆さん、味噌汁はあるか。 ない。  吸い物をこしらえてあげなさい。 実がない。 永谷園はなかったか? ない か、お茶でも飲んで、ゆっくりなさい。

 鼓ヶ滝の前で、歌を詠もうと思いました。 家でも孫娘のお花坊と三人で、 歌を詠んで遊んでいる、聞かせて下さい。 <伝え聞く鼓ヶ滝へ来て見れば沢 辺に咲きしたんぽぽの花>と詠みました。 あと一つ手直しすれば、天下無二 の歌になる、「伝え聞く」を「音に聞く」と直されよ。 ご老体、有難うござい ます。 手直しを受けて下さいますか。 すると婆さんがあと一つ「鼓ヶ滝へ 来て見れば」を「鼓ヶ滝を打ち見れば」と手直し、これも頂戴する。 孫娘の お花坊、よいお歌になりましたね、でも旅の方、「沢辺」を「川辺」に直せば、 皮と川、滝が一段と大きくなります。 <音に聞く鼓ヶ滝を打ち見れば川辺に 咲きしたんぽぽの花>、歌が見違えるようになりました、私は西行と申します 歌詠みですが、天狗の鼻を折っていただきました。

おい!と、樵。 ここは? 滝の前だよ。 夢か。 旅人はみんな夢を見る、 同じ夢だ、永谷園はなかっただろう。 手直しを受けたか、お前さんは偉い。  日本一の歌人になられる方だ。 みんな怒って断るんだ。 あの三人は実は和 歌三神(住吉明神・玉津島神・人麻呂)なのだ。 和歌三神の歌の手ほどきで は、罰が当たる、もう手遅れだが…。  大丈夫だよ、この滝は鼓ヶ滝、けし てバチは当たらない。

歌奴、テンポもよくて、とても上手い。 芸名だけで見くびったのは、御見 逸れだった。

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