〔福沢と商売〕7 『丸屋商社之記』商売についての福沢の洞察力〔昔、書いた福沢34〕2019/03/15 07:18

         等々力短信 136 1979(昭和54).2.5.

 明治2(1869)年の「丸屋商社之記」(全集20巻22頁)の中で、福沢諭吉 は商人の目をつけるべき要点を述べている。 「合衆国貨幣の銘に曰く、合す れば即ち立ち散(わかる)れば即ち斃ると。ユーナイテッド、ウヰ・スタンド、 セパレーテッド、ウヰ・フォール。又西洋の古語に曰く、徐々に急ぐ可しと。 メーキ・ハスト・スローリー。」「又或る老人の咄しに、世間の商家一廻の商ひ に万金を得るものは屢々(しばしば)あれども、十年にして数万金を残す人は 稀なりと。」

 この時、福沢は数え年36歳、もちろん商売の経験もない。 なのにこの短 い文章の随所で商売の本質とも思えるものにふれているのを読むと、やはりこ の人の洞察力のすごさを感ぜずにいられない。 藤原銀次郎氏の『福沢先生の 言葉』という本にも引用され、強い影響を与えたことがわかる。

 「凡そ人の生業は世間の不足不自由を達し吾不足不自由を満足せんとするの 外ならず。他の不自由を達するの大なるものは吾幸福を得るも亦従て大なり。」