春風亭一朝の「芝居の喧嘩」後半2019/03/02 07:07

おう、そこを行くのは市郎兵衛さん、途中でちょっと、付き合ってもらいた い所がある。 相撲か、芝居に付き合ってもらいたい。 相撲は、一枡、大関 を何場所も通している鬼熊と川魚(かわざかな)がやる。 鬼熊は若いが、川 魚は古株、鬼熊はぶちかましが強いが、川魚は古いのにあたると怖い。 勘弁 してよ、相撲は嫌いなんだ、大きい方が勝つんだろう。 小が大を投げ飛ばす ことが、たまにあって面白い。 仕切りが長い。 酒を飲んで、つないでりゃ あいい。 相撲の汚いケツを見てもしょうがない。 芝居はいい、女形もいい が、まわりにもいい女が来る。 悪い野郎が痛い目に合うところがいい。 相 撲は、本当にやる。 いいから、今日は俺に付き合え。 手拭いで頬っ被りを して行くか。

 木挽町の山村座。 混んでくると、御膝送りを願います、と若い衆。 半畳 という小さな名入りの座布団が、半券代わり。 桟敷で、前につめさせ、「半畳 改め」をする。 「でんぼう(伝法)」だ、顔パスや楽屋から入る、花道の七三 に唐桟の着物に半纏の男、半畳は端(はな)からない。 出てってくれ、客じ ゃない、「でんぼう」だ、張り倒せ。 芝居小屋の若い連中が、皆でそいつをボ コボコにする。 喧嘩だ、面白い。 そこへお茶子が半畳を持って来た。 ち ゃんと払っていたのだ。 雷の重五郎、町奴・幡随院長兵衛の子分だという。  雷が怒っているぞ。 なるほど。 そこに町奴と対立している四谷の旗本奴・ 白柄組(しらつかぐみ)水野十郎左衛門の四天王の一人、金時金兵衛がいたの で、揉め事が大きくなる。 唐犬権兵衛と、頬っ被りの男、夢市郎兵衛は長兵 衛の手下、雷の重五郎と一緒に、金時金兵衛をひっくり返して、足で踏んづけ る。 水野方は、押っ取り刀で、赤鬼の喜平、釣鐘の弥左衛門、風鈴の源兵衛 らが駆けつけ、幡随院長兵衛、水野十郎左衛門の間で、血の雨が降る。 これ から面白いが…、続きは、また。 と、講釈の「切れ場」で終わる。