やじ馬の観察記録〔昔、書いた福沢127〕 ― 2019/10/14 07:12
やじ馬の観察記録<小人閑居日記 2001.12.13.>
朝日新聞11日夕刊文化面「単眼複眼」に、ロベール・シャール著『東イン ド航海日誌』(岩波書店)の紹介がある。 1690年、東インド会社とフラン ス海軍合同のインド遠征艦隊に、庶務係で参加した後のフランス作家シャール の日誌で、裏方だった著者の日常観察には、やじ馬ならではの自由な本音の吐 露があって、面白いという。 情事あり、ゴシップあり、飲食に関する記述も 多く、人物評、遠征艦隊の実態、イエズス会による布教と東インド会社による 植民地開拓の癒着など、内部告発に近い面もあるという。
「咸臨丸の秘密」に関して、士官階級に口裏合せがあったかのような沈黙が あったのに対して、裏方の記録に真実が書かれていたことは、興味深い。 木 村摂津守の従者として参加した斎藤留蔵(当時16歳)の日記、橋本進さんが 読み込んだという新史料の小杉雅之進日誌などである。 小杉雅之進は蒸気方 として航海に参加、身分は教授方手伝、後の少尉候補生、まだ20代前半だっ たのではないかと思う。 あれほど万事に自由なスタンスでいた福沢諭吉が、 なぜかこの問題では「サムライ」根性を抜けられなかったのは、まことに残念 であり、不思議でもある。
やじ馬の自由な立場から、世の中のもろもろを観察し、書いておくことの大 切さを感じた。 <小人閑居日記>の、よって立つところだろう。
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