「始造」〔昔、書いた福沢125〕2019/10/13 08:17

         「始造」<小人閑居日記 2001.12.3.>

久米宏の「ニュース・ステーション」は、一千万人もの人が見ているそうだ から、ごらんになった方も多いと思うが、11月22日に大江健三郎さんが出 ていた。 各人が個を見つける(アイデンティティーを確立する、ということ か)ための三つとして、たしか、

1.さと(悟)る 2.始造する 3.capability を挙げていた。

このうち「始造」は福沢諭吉の作った言葉だという話だった。 しかし、こ の「始造」、『広辞苑』には出ていない。

 「始造」が、福沢の著作のどこに出てくるかと、調べてみると(積んどくの 参考書だけは沢山ある)、『文明論之概略』(明治8年)の緒言(しょげん)にあ った。  「今の我文明は所謂(いわゆる)火より水に変じ、無より有に移らんとする ものにて、卒突(そつとつ)の変化、啻(ただ)に之を改進と云ふ可らず、或 は始造と称するも亦不可なきが如し。」

 維新後の日本が、文明へと進もうとすることは、火から水に変り、無から有 に移ろうとするような急激な変化であり、これは「改進」というよりも、始め から造り出す「始造」と言うべきような大難題である、ということだろうか。  西欧列強による植民地化の危険もあった当時の日本が、独立を守るためには急 いで文明へと進まなければならないというのが、福沢諭吉の認識であった。

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