台湾有事に、日本無事か?2023/06/23 06:54

 そんな折も折、ブリンケン米国務長官が北京を訪問し、18日に中国の秦剛(チンカン)国務委員兼外相、外交部門トップの王毅(ワンイー)政治局員と長時間にわたって会談、19日には習近平(シーチンピン)国家主席とも面会した。 関連の新聞記事を、丁寧に読んでみることにした。 ブリンケン氏は、「バイデン大統領は、米中には関係を管理する義務と責任があると信じ、訪中を指示した」と述べ、習氏は、「大国間の競争は時代の流れに合わない。中国は米国に取って代わることはしない」と述べた、という。

 だが、王毅氏との約3時間に及ぶ会談では、台湾問題をめぐり王氏は「永遠に中国の核心的利益の中の核心だ」と指摘、米側は「台湾独立に明確に反対しなければならない」と要求した。 ブリンケン氏は会見で、中国の台湾海峡での「挑発的な行為」に懸念が高まっていると指摘しつつも、「米国は台湾独立を支持していない」と述べた。

 最大の火種である台湾問題についての、米中の争点と立場。 米国は、「軍事的圧力を警戒。台湾をめぐる中国の立場を「認識」する「一つの中国」政策は維持。台湾への武器輸出は強化。」 中国は、「中台統一は悲願、米側の動きは内政干渉。武力行使の可能性も「放棄しない」。」

 バイデン米政権が、武器の供与や議員による交流などで台湾への関与を深めていることを、中国は「台湾独立勢力と共謀する内政干渉」と断じる。 そして米側の「従来の『一つの中国』政策は変わらない」との立場と、「言行不一致」だと批判し、「米国は台湾の独立を『支持しない』」から、「台湾独立に反対」という、さらなる行動を求めている。 これはなかなか難しい。 米議会では対中強硬論が強まっており、来年11月に大統領選を迎えるバイデン氏は国内対応に追われる上、中国への譲歩で「弱腰」との批判は避けたい。

 最近、南シナ海上空で中国の戦闘機が米偵察機に、台湾海峡では中国艦船が米ミサイル駆逐艦に異常接近した。 軍事衝突に発展しかねない危険な行動だ。

 昨夏、当時のペロシ米下院議長が台湾を訪れた対抗措置として、中国側が打ち切った軍事対話などの対話チャンネルの復旧も、今回は合意に至らなかった。 米側は高官級の往来を続けるというハイレベル外交の再開の合意の目的を「偶発の衝突を避けること」としており、今後、軍同士の意思疎通の復旧も焦点となる。

 抜本的な関係改善は望めないものの、米中両国とも対立が制御できずに衝突に向かう事態を避けたい点では一致しているのであろう。 衝突や対立を回避する対話が続けられて、「ツキディデスの罠」に陥らないことを祈りたい。