日本史における「会社」2006/12/18 07:57

 ついで12月1日の高村直助横浜市歴史博物館館長の「会社の誕生」。 高村 さんは東大や共立女子大で教えた日本近代史の専門家だそうだ。 1996年に 『会社の誕生』(吉川弘文館・歴史文化ライブラリー6)を出し、それ以後考え たことを今年『明治経済史再考』(ミネルヴァ書房)の「「会社」との出会い」 にまとめたという。

 まず日本史における「会社」を考察する。 かねてから明治の工業化の急激 な発達の不思議に注目していて、『会社の誕生』ではハードの機械の輸入に加え て、会社の組織などのソフト面の大事なことを論じた。 江戸時代に「会社」 はあったか? 株式会社のようなものは見当たらない。 合資会社・合名会社 にあたるものは若干ある。 明治になってから断絶というか、大きな飛躍があ り、明治10年代に企業が勃興した。 特に明治19・1886年から22・1889年、 鉄道、紡績などが、政府の誘導でなく民間で動き始める。 明治の後期に盛ん になった。 江戸と明治のギャップを埋めたものは、江戸時代の前提があった。  まず株式会社の要素がすでにあった。 三井や鴻池などに、所有と経営の分離 の前史がある。 出資だけをする有限責任の前史「加入」という制度もあった。  大名貸しや廻船などに出資し、利子だけをもらう匿名組合のようなものもあっ た。 福沢『西洋事情初編』(慶応2・1866年)「商人会社」の影響も大きい。