坂井達朗さんの『時事新報』読み込み2006/12/23 07:10

 新聞としての『時事新報』の性格を体系的に理解するために、坂井達朗さん は、全記事を内容に即して分類し、一覧・比較対照する必要があると考えて、 試みている。 内容分類は5段階に、例えば1「日本国内問題」→2「皇室」→ 3「皇族・華族」→4「天皇・皇后」→5「詔勅・勅令」というように分ける試 案を提示している。 そして一本一本の記事について、『欄』『見出し』『(記事 本文)内容』『分類(番号)』の一覧表をつくる。 手間のかかるたいへんな作 業だ。 簡単に結論の出るような作業ではないが、編集スタッフの関心が、外 交、軍事、教育(教育制度の改革期だった)にあるというような話もあった。

 そして、問題の「論説」については、明治17年12月から18年12月までの 全「論説」(371編←馬場の仮集計、以下も)を、表題、全集所収の有無(収録 167編、非収録204編)、論旨・論調が福沢に似ているもの(後述の(1)A47 編、全集所収1編)、署名筆者(22編)、分類(番号)の一覧表にしている。 特 徴を挙げれば、(1)福沢以外のスタッフが書いたと推定される(全集未収録の) 社説 A.論旨、論調が福沢に非常に似ているものが多い。 B.福沢自身が執 筆した論説と論旨が異なるものはごく僅かである。 C.福沢にはない発想・論 旨。 (2)社外人が書いた社説…署名の中には執筆者の推定、断定しうるも のが若干あり。

(3)福沢がスタッフが執筆する社説の内容に指示を与えた例。 故石河幹明 氏遺族所蔵の反故の中から、社説に関する福沢のメモが発見された。 明治24 年3月から5月にかけての5点で、1点(4月14日のもの)を除いて全集未収 録という。

 全体に、いわゆる「福沢工房」説が妥当のように感じられるが、「よくわから ない」というのが、その中間報告の結論のようだった。