多民族国家アメリカの国技2008/02/09 07:56

 『日本人が知らない松坂メジャー革命』で、いくつか印象に残ったことがあ った。 その一つが、野球が多民族国家アメリカの国技だということだ。 ア ンドリュー・ゴードンさんの曽祖父は、ロシアのユダヤ人家庭に生れ、1885 年に13歳でアメリカに移民してきた。 アメリカ文化に順調に溶け込んで、 新聞売りから身を起こし、ボストンの「皮革地域」の中心地で靴底製造の会社 を起して成功した。 その私有地の池に1942年、前年いまだに破られない4 割6厘を打ったレッドソックスのテッド・ウイリアムスが、釣りにやってきた というのが、ゴードン家自慢の一つ話だ。 このエピソードをゴードンさんは、 20世紀初頭、幾多の緊張をともないながら、野球が「移民」を「アメリカ人」 に変えるのに役立ってきたという歴史のひとこまだと紹介する。

 ゴードンさんは、1950年代と60年代には、野球は根強く残る人種問題の解 決という、アメリカの宿命的課題に貢献することになった、という。 ジャッ キー・ロビンソンを皮切りに、アフリカ系アメリカ人が迫害を受けながらも、 大リーグという舞台で活躍を許されていく。 70年代には中南米やカリブ海沿 岸地域の選手たちが、近年は、日本・台湾・韓国の選手たちがやってくるよう になった。 松坂獲得というレッドソックスの「日本戦略」には、この球団の 歴史上の陰の部分、すなわち強い人種差別球団だった歴史を打ち消そうという 企図もあった、とゴードンさんはいう。 別の所にはレッドソックスが、ヤン キースにくらべて圧倒的に多く、アメリカン・ユダヤ人を受け入れてきたとい う話も出てくる。

 ゴードンさんは「松坂のピッチングに対するアメリカ人のリアクションは、 当然ながら「国技の野球」への自信と尊敬の気持ちであろう。 と同時に、わ たしはそこに、異民族間の連帯を強化し、民族の壁を超越するスポーツの可能 性を、再確認するのである」と書いている。

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