元財務相 藤井裕久さんの遺言<等々力短信 第1158号 2022(令和4).8.25.>2022/08/08 07:11

 参議院議員選挙の直前、7月8日の朝日新聞朝刊「耕論」のテーマは「予備費と民主主義」だった。 国の予備費は「コロナ対応」で兆円単位で積まれるようになり、今度は物価高対策にも使われている。 政府の一存で使えてしまうお金の扱い方に、民主主義の課題が浮かぶ、というのが問題意識だ。

 元財務相の藤井裕久さんが、駒野剛記者のインタビューに、以下のように答えていた。 1932(昭和7)年生まれ、自民党から参院に初当選、衆院に移り、新生党に参加、細川護熙政権で蔵相、鳩山由紀夫政権で財務相を務め、2012年に政界を引退した人だ。

 予備費は、災害の発生など予見し難い予算の不足に充てるための臨時の埋め合わせの経費で、内閣の責任において支出できるもので、これまでは3千億円とか5千億円程度の規模だった。 この数年の兆円単位、10兆円などという規模は異常なものだ。 新型コロナの流行という未知の状況に、臨機応変に使えるお金を積み上げたという理屈を立てたのだろうが、補正予算で対応すれば済むことだ。 地方自治体には予備費などから「地方創生臨時交付金」が支給されたが、中には巨大なイカのモニュメント、結婚式のシャンパンタワーの経費や立派な公用車の購入など、本当にコロナ禍対策か疑われるケースも伝えられている。 国会での事前チェックがなおざりにされた結果だろう。

 かつて「臨時軍事費特別会計」があり、戦費に充てるため、国会の審議を経ずに支出できる仕組みとして、多額の国費が投じられた。 この結果、無謀な戦争を支え、財源を膨大な国債発行に頼った結果、戦後は悪性インフレの原因になったともいわれている。

 一般会計の中の予備費と、特別会計である「臨時軍事費特別会計」は別のものだが、国会審議をないがしろにするという意味において、どちらも悪だ。

 「臨時軍事費特別会計」は軍人政治家が推し進めたものだが、巨額予備費は国会を軽視しても平気な政治家たちが、役人たちに実現を迫ったものだと考えている。 その連中は赤字国債を増発させてきたが、今度は「防衛費を倍増させろ」「その財源も国債だ」と言いだしている。 そんなむちゃを許し続ければ、国が壊れてしまう。  国会軽視の予備費乱発は国を誤る、後輩の政治家、官僚たちには「もうこれ以上、財政の乱脈を許さず、きちんとただして欲しい」と痛切に願っている。  その5日後、7月13日の朝日新聞朝刊は、藤井裕久さんが参議院議員選挙投開票日の10日(「耕論」の2日後)に都内の自宅で亡くなったことを報じた。 90歳だった。 東京大空襲を経験し、「生き残ったら、二度とこんな目に遭わない社会をつくる」と誓い、東京大学卒業後、大蔵省(現・財務省)に入った、とある。

(追伸・「ババ新報」を新聞休刊日にお読み下さい。このところ、「等々力短信」は偶然、新聞休刊日の発信になっています。)

コメント

_ 轟亭(藤井裕久さん) ― 2022/08/24 07:08

8月23日、24日のブログに、歴史の語り部、藤井裕久さん<小人閑居日記 2022.8.23.>、政権交代と『民情一新』、再録<小人閑居日記 2022.8.24.>を書きました。

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