「コスモス」と「夜業」の句会2022/09/12 07:04

 8日は『夏潮』渋谷句会、雨の予報もあったが、幸い降っておらず、終わっても降っていなかった。 兼題は「コスモス」と「夜業(やぎょう)」、私はつぎの七句を出した。

  なだらかな丘にコスモス百万本
  コスモスも御接待なる遍路道
  朝顔からコスモスになる鉢の主
  秋桜や日本を探す旅に出て
  パソコンで提出書類夜業かな
  ディスプレイ夜業の顔を照らし出し
  たいやきの御八つに夜業計が行き

 私が選句したのは、つぎの七句。

  バス停やコスモス坂と命(ナヅ)けたる  英
  風に色付けるが如し秋桜          祐之
  コスモスや若牛集ふ丘の牧        正紀
  チャルメラが通る夜業の窓の下      和子
  テレワーク同士夜業の続きたる      祐之
  愉しみは夜業のはての塩むすび      盛夫
  耳澄ます夜業帰りの子の気配       真智子

 私の結果。 <なだらかな丘にコスモス百万本>を美佐子さん、<コスモスも御接待なる遍路道>を英主宰、伸子さん、庸夫さん、照男さん、さえさん、<朝顔からコスモスになる鉢の主>を真智子さん、<ディスプレイ夜業の顔を照らし出し>を耕一さん、淳子さんが採ってくれた。 主宰選1句、互選8票で、計9票、最近稀な成績だった。

 主宰の総評。 「夜業」。 題詠は、昔ながらの本来を、なぞりながら作るのが、一つ。 実際に、今、どうなっているかを、作るのが、もう一つ。 近年、言葉は年とともに変わっていく。 「コスモス」も、同じ。 清崎敏郎さんの<コスモスの押しよせてゐる厨口>は、70年前の景、コスモスのポジションも変わっている。

 「夜業」と「夜なべ」の違いについて。 『虚子編 新歳時記』では、「夜業」と「夜なべ」が、別項になっている。 「夜業」は、「工場で夜まで仕事をする場合を夜業をするといふ。」 「夜なべ」は、「秋は日が短かくなるので、自然夜の仕事が多くなる。農家では取入れが近づくと、月夜などには庭に出て夜なべにはげみ、又燈下に冬衣や蒲團の手入れ等をする。夜仕事(よしごと)。」

 <コスモスも御接待なる遍路道>の主宰選評。 しみじみとした句。 「接待」も「(秋)遍路」も季題だが、「コスモス」が強い季題なので、かまわない。 春と違って、秋遍路は一日が短いから、遍路には向いていないが、小刻みに行く。 「ちょっと休んで行きさっしゃい」、巡って来る人も弘法様(同行二人)。 人と人の心の通い合いが、感じられる句。