扇遊の「木乃伊取り」前半 ― 2011/03/07 07:01
人間、考えることや、迷うことが、一日に数回はある。 咄家でも、ある。 昼に、何を食おうか。 夜、ビールにするか、いきなり緑茶ハイにするか。 男 に生まれて、女性に迷う。 寿命が延びて、60,70,80になっても、迷うようだ。 咄家はお蔭さまで定年がないので、先輩で迷っている方が、本当にいる。 芸 人だから、色気がなければならない、芸の足しになるとはいうけれど、ああな りたいという方と、そうでもない人がいる。
若旦那が吉原に行って帰って来ない。 番頭の佐兵衛は、角海老を知ってい るかと聞かれて、一瞬、間を置いて「へぇ」と言った。 方角もわからないけ れど、人に聞いて、私が迎えに行くと出かけて、五日帰って来ない。 佐兵衛はよくない、頭(かしら)に頼んだら、ああいう所の振り合いも、派 手な付き合いも、わかっている、と旦那。 仕事の話かとやって来た頭の喜多 郎、ウチで困った事が出来た、倅が…と聞いて、若旦那亡くなったんですか、 旦那と違ってカネ遣いがきれい、爺の代から三代、お世話になって腐った半纏 の一枚も頂いているから、と失言しつつ、腕を叩き折っても連れて帰ると、出 かけた頭、七日帰って来ない。
勘当するといきり立つ旦那に、奥方、あなたは表には堅いけれど、ウチに置 く女中には、みんな手をつけて、と。 「オラガ迎エニ行クベエト思イマス」 と飯炊きの清造が登場。 瘤のある手織り木綿を着て、熊の皮の煙草入れを下 げた清造に、お袋様は勘定が足りなかったら、これで払って連れて来ておくれ と巾着を渡し、清造は首に縄をつけても、と言う。 はたして清造は、若旦那を連れ帰ることが出来るのだろうか、それはまた明 日。
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