古いものを大切に2012/02/09 04:29

古いものを生かす<小人閑居日記 2004.4.6.>

 井上ひさしさんは、ボローニャで、みんなが老人を尊敬していることに気づ く。 劇場でも、お年寄りが入って来ると、みんなが立ち上がる。 くらべて、 日本は悲惨である。 なぜか。 あちらでは、老人が尊敬されるだけのことを してきた、社会のために…。 ボローニャは、ムッソリーニが倒れたあと、そ の残党である黒シャツ軍団とドイツ兵による共同管理体制下にあった。 それ に抵抗し、多くの犠牲者を出しながら、みんなで参加し、パルチザンとして解 放戦争を戦ったのが、いまの70歳以上の老人たちなのだ。

 もう一つ、ボローニャで注目すべきことに、跡地利用の仕方に、みんなの知 恵が生かされていることがある、と井上さんは言う。 煉瓦造、石造の建物は、 半永久的にしっかりしているので、そのまま利用し、内部を改造して使う。 昔 からの精神を生かして、みんなでどう使っていくか、考えている。 例えば、 煉瓦造の食肉市場は、すばらしい保育所と学生寮に、事務棟は老人ホームに生 まれ変わり、そこに住む老人たちが全体を管理し、経験を生かして、次代を担 う若者や子供を育てることにかかわっている。

 ボローニャは、出版文化の町(ミラノとともに)でもあり、図書館は70も ある。 昔、修道女たちが組合修道院をつくり洗濯屋を営んでいた建物は、女 性図書館として関係の資料を集め、EUの同種の図書館の本部になっている。  王様のタバコ工場だった建物は、チネッチカという世界映像資料センターにな っている。 古い映画フィルムの修復を3人で組合をつくって始めたのが、次 第に知られ、世界中から仕事が来るようになった。 それが20世紀最大の発 明である「映画」の、さらには「映像」の、世界的な一大資料センターに発展 した。 国籍に関係なく利用できる。 それぞれの分野で「世界一」になろう という、ボローニャ市民の誇りが表れている。