扇遊「巌流島」のマクラ ― 2012/07/04 02:17
師匠の入船亭扇橋が中学の頃から俳句をやっていた人だから、一門の忘年会 は句会で、酒など飲んでいられない。 師匠に、天、地、人を選んでもらう。 句歴の長い師匠は、小三治、米朝、永六輔、小沢昭一さん達もいる東京やなぎ 句会の宗匠だ。
炭熾す前座は「足局」(かが)むことばかり
しあわせは玉葱の芽のうすみどり
さくらんぼ一つつまめば二つかな
師匠が句に詠むのは、ごく当り前の、こうした日常のことが多い。 弟子の 私も、すごく素直だといわれていて、足袋など隠したりしませんよ、皆さん信 じているようだけれど…。 小三治師の句に〈煮凝りの身だけ除けてるアメリ カ人〉というのがある。 師匠に聞いたら、ドイツ人やフランス人では駄目、 アメリカ人でないとと言う…、よくわからない。 小沢昭一さんの句に、漢字 ばかりで〈校長満悦洋裁学校潮干狩〉、いかにも小沢さんらしい。
扇橋の弟子の句は、忘年会の時にしか作らないから、冬の句ばかりになる。 俳句は季語が必要だが、川柳は穿(うが)ちや諧謔だと言って、志ん生が「巌 流島」のマクラでやっていた「さァ事だ」の付け句を引いた。
さァ事だ、研屋(とぎや)の親父気が違い
さァ事だ、下女鉢巻を腹に締め
さァ事だ、馬の小便(しょんべん)渡し舟
それで、「巌流島」の本題に入る。
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